季節を変え、旅の出発地点である「星野リゾート リゾナーレトマム」へと再び訪れた『旅するLovePiano』*。観光客たちが憩いの時間を過ごすcafe&bar「つきの」で開催された、第5弾のレポートをお届けします。
*『旅するLovePiano』は、星野リゾートとヤマハミュージックジャパンで開催するLovePiano(ストリートピアノ)プロジェクトの名称であり、ピアノの愛称です。
コミュニケーションを通じて感じる、音楽の楽しさ
『旅するLovePiano」第5弾の会場となったのは、「星野リゾート リゾナーレトマム」内のcafe&bar「つきの」。2022年8月から続く旅路は、同施設の「雲海テラス」からスタートしましたが、昨年とはうって変わり3月のトマムはパウダースノーが舞う季節です。冬も終わりに差し掛かり、もうすぐ春を迎える季節とはいえ、一面の雪景色はスキーを楽しむ観光客で賑わっています。
ゲレンデからアクセスできるカフェに設置された『旅するLovePiano』
cafe&bar「つきの」は、宿泊施設である「トマム ザ・タワー」と「リゾナーレトマム」の間に位置する、複数の飲食店が軒を連ねるエリア「ホタルストリート」内にあります。スキーを楽しむ合間のひと休みのために人々が訪れ、冬の期間中はテラス席にこたつ付きのテーブルが設置されており、オープンテラスの暖炉を眺めながらゆったりと時間を過ごすことができます。
今回演奏を体験したのは村田千絵さんと長男の康隆さん、長女の結莉さん、次女の絢莉さんの4人。村田さんは京都で音楽教室「音楽工房オトノエ」を主宰しながら、臨床音楽士®︎として医療・教育・福祉の場でこどもから大人までさまざまな世代の方と一緒に音楽を楽しんでいます。
今回の参加者は村田さんご家族4名。お母さんの村田さんは臨床音楽士®︎です
社会福祉士の免許も取得している村田さんは、音楽教育と同じく子どもの発達についても専門的に学ばれたそうです。そんな村田さんが目指すのは、ピアノが上手くなるためだけではなく、音楽を通して人と人が関わり心を通わせる楽しさを知ってもらえるような音楽教育。小学生を中心に、幅広い年代の子どもたちに接しながら日々音楽に触れることの楽しさを伝えています。「子どもたちは、音楽を楽しんだり上手にピアノを弾いてみたいと取り組み始めますが、中にはドキドキしたり、上手くできなかったらどうしようと不安に思うお子さんもいます。緊張や不安を上手に伝えられず、駄々をこねたり、レッスンに集中できないこともあります。そんなさまざまな子どもの気持ちに丁寧に寄り添い、しっかりと受け止めながら、音楽の楽しさを見つけるお手伝いがしたいと考えています」
臨床音楽士®︎、そして社会福祉士としてたくさんの子どもたちと関わる中で、一生懸命に子育てをしておられる保護者の方とも、日々、お子さんの成長発達やレッスンの取り組みなどを共有する時間を大切にしている村田さん。「保護者の方と共に、子どもたちを見守りながら、音楽教育を通して子どもたちの健やかな育ちを支え、保護者の方の子育てをそっと支えていきたいと思っています」
ご自身の子育ての経験から、現在のような音楽観を持つようになったという村田さん。今回は家族揃って4人での、はじめてのストリートピアノ体験となりました。
家族4人でピアノを囲み、音を鳴らす時間
村田さんの声掛けで家族全員がピアノの前に集まり、4人での演奏がはじまりました
村田さん一家の演奏は、お昼過ぎからスタート。カフェ店内のお客さんは、スキーやスノーボードの合間に、それぞれゆったりと過ごしています。まずはお母さんと絢莉さんが「アメージンググレイス」を連弾で演奏。村田さんの伴奏に合わせて、絢莉さんがメロディーを奏でていきます。続いて、村田さんの独奏による「トルコ行進曲」では、ユニークなジャズアレンジが披露され、演奏後にはカフェのお客さんから拍手が起こりました。ふたたび村田さんと絢莉さんの演奏する「ファのパヴァーヌ」では、村田さんが結莉さんと康隆さんを演奏に誘い、家族揃っての連弾が実現しました。最後に村田さんによるグリーグの「夜想曲」が披露され、短い時間ながらゆったりとした時間が流れたストリートピアノ演奏会が終了しました。
村田さんと連弾を体験した絢莉さん。現在はピアノのレッスンを受けていないそうですが、学校での合奏や発表会の機会があると、練習して本番に備えるそうです。今回も準備をしてきたという絢莉さんに、感想をうかがいました。「ピアノのデザインがめちゃめちゃ可愛くて気分が上がりました。お店のなかなので、周りに人がいてざわついている感じがして、そのほうが気持ちよく弾けました」
絢莉さんお気に入りの『旅するLovePiano』のデザインについては、村田さんも太鼓判を押します。「さまざまなラッピングピアノも見てきましたけど、いろんな人に好きになってもらえそうなデザインだと思います」
クラシックバレエを習っているという長女の結莉さんにとっては、今回はひさしぶりの演奏の機会になりました。「普段から家の中でピアノの音はよく聞いているんですが、ピアノに触れる機会はなかなかなくて。今回こうしてみんなで演奏ができて、懐かしい感覚になりました」と結莉さん。村田さんの演奏について感想を尋ねると、「ちょっと緊張しているなって思いました」と笑います。
演奏後は皆さんの緊張もほぐれ会話が弾みます
締めくくりとして演奏されたグリーグの「夜想曲」について尋ねると、村田さんの頭にはトマムの山のイメージがあったそうです。「美しい曲なので選んだんですが、グリーグが住んでいたノルウェーと、この場所のイメージがどこか重なるなと思いながら弾いていました。ただ穏やかに時間が流れるような、この場所にぴったりな曲だと思います」
間違えてもいい、ストリートピアノの演奏を楽しむ意味
街の中でストリートピアノを見た経験はあるそうですが、実際に演奏するのは今回がはじめてだったとのこと。仕事を通した演奏歴が長い村田さんにとっても、今回の体験は新鮮だったようです。「コンサートホールでもなければ、自宅でもないのが新鮮で、とても気持ちよく演奏ができました。これまでさまざまな場所で演奏はしてきましたが、こんな山の中で演奏することはないですし、開放感がありますね。しーんとした空間で演奏を見られている感じではなく、周りでくつろいでいる人たちの中で弾くのがストリートピアノの醍醐味かなと思います」
お母さんの演奏も、場所を変えるとまた違う聴こえ方がしたそうです
さらに村田さんは、音楽教育に携わっているからこそ感じる、ストリートピアノが持つ役割について語ります。「たくさんの子どもたちに、ストリートピアノで演奏することを勧めてあげたいなと思います。保護者の方にも『ストリートピアノで弾いてみようよ』と子どもたちの背中をそっと押してあげてほしいですね。家で一人黙々とピアノに向かって練習するのって寂しいですし、子どもたちにとっては大変なこと。間違えたらどうしようって思うかもしれませんが、間違えることは何も怖くないし、それよりも『すごいね』ってみんなが褒めてくれるはず。そんな経験が、きっと音楽への気持ちを素敵に育んでくれると思いますし、大事だと思います」
家族4人でスキー×音楽を満喫した特別な体験
施設内の「アイスヴィレッジ」では氷のグラスづくりを体験。オリジナルドリンクを楽しみました
滞在中、4人揃ってスキーを満喫したという村田さん一家。長男の康隆さんは、スキー場と宿泊施設が一体となったトマムの魅力を堪能できたようです。「山頂からなだらかに滑れる初級者向けのコースがあるなど、幅広い層が楽しめるスキー場だと感じました。アイスヴィレッジの氷の教会は見たことがなくて新鮮でしたし、スケートや花火も楽しめて、名前の通りリゾートが満喫できる場所だと思います」
旅の終わりに、今回の旅を振り返った感想をお聞きしました。「自分の願いや夢が詰まったような、『旅するLovePiano』のコンセプトに惹かれて今回応募させていただきました。普段はスキー旅行ならスキーだけが目的だったところ、今回は音楽も一緒に演奏できる、なかなかない体験ができたと思います。今年で長男が高校を卒業し、子どもたちが成長するにつれて家族旅行の機会も限られてしまうので、とてもいい思い出になったと思います」
普段から旅と音楽に親しむ村田さん一家にとっても、特別な体験となったようです。1年をかけて星野リゾートの各施設を巡る『旅するLovePiano』も残すところあと2か所。次はどんな景色に囲まれて音色を奏でるのでしょうか。ここでしかできない特別な体験を求め、ぜひ足を運んでみてください。
文:堀合俊博(a small good publishing)
写真:山田雅幸
星野リゾート リゾナーレトマム(北海道勇払郡)
大地から聳え、大空に溶け込むように建つデザインがひときわ目を引く、ツインタワーの高層ホテルを中心に、レストランやプールなどが広大な敷地に点在。雲海を眺める夏の「雲海テラス」、パウダースノーの醍醐味が忘れられない冬のゲレンデまで、シーズンを通してリゾートステイが楽しめます。
*施設詳細は公式ウェブサイトにてご確認ください。
cafebar「つきの」は2023年3月31日まで『旅するLovePiano』のデザインをイメージした限定スイーツを提供中です
冬にだけ現れる「アイスヴィレッジ」。美しい氷の街で、幻想的な体験をすることができます
期間限定でオープンした「氷のセイコーマート」。品揃えの豊富さにびっくり!
氷のセイコーマート内ではフローズンヨーグルトづくりが体験できます
家族4人で氷上のジップラインを体験!大声で笑い合う楽しい時間を過ごしました
星野リゾート リゾナーレトマム
北海道勇払郡占冠村中トマム
公式ウェブサイト