こんにちは。ヤマハピアノデモンストレーターの伊藤優里です。
ピアノで楽しく弾ける楽曲やアレンジをいろいろご紹介していますが(前回までの記事はこちら)、今回は癒されるクラシック曲をテーマに、美しいメロディーが印象的な曲を中心にご紹介したいと思います。
ベートヴェン ピアノソナタ第8番「悲愴」
ベートーヴェンの初期の作品であるピアノソナタ第8番「悲愴」。
今回ご紹介するのは第2楽章です。ソナタの顔ともいえる第1楽章とは対照的に、穏やかな緩徐楽章が用いられることが多いですが、その中でも特に有名です。
長調で始まるけれどどこか悲しげな印象も受ける美しいメロディーは、「悲愴」という表題に思いを込めながら演奏したくなります。
こちらは、調号なしのハ長調で書かれていて、伴奏がシンプルなのでわかりやすく、譜読みがしやすいアレンジになっています。譜面の冒頭に書かれている「Adagio」は「アダージョ」と読み、ゆるやかに、ゆったりと、などの意味があります。
どのくらいの速さで演奏すればよいかの目安でもあるのですが(よくメトロノームに速度標語が一緒に書かれていたりしますね!)、それだけでなくどんな雰囲気の曲なのかを示すものでもあります。
単純に速さだけでなく、ゆったりとした雰囲気を意識して、左手の8分音符や和音の連続を焦らず、ゆるやかに演奏できるとよいですね。
もうひとつ、初級アレンジからのご紹介です。
悲愴 第2楽章(Ludwig van Beethoven) /ピアノ(ソロ) 初級
こちらも同じくハ長調ですが、ハーモニーの変化がすこし多く、和音の重なりや響きを味わいながら演奏ができます。
左手に動きがあるので片手での譜読みをしっかりしておきたいですが、片方が8分音符で動いているときにもう片方は2分音符など音がのびていることが多いので、無理なく両手で練習しやすいのではないでしょうか。
ハーモニー感を味わいたい方におすすめのアレンジです♪
ベートーヴェンのオリジナルに限りなく近いのがよいけど、オリジナルは難しそう……という方にぴったりのアレンジはこちら。
ピアノ・ソナタ 第8番 「悲愴」 第2楽章(Ludwig van Beethoven) /ピアノ(ソロ) 中級
原調と同じくフラットが4つ。中間の転調部分もあり、オリジナルと同じサイズで弾きごたえがあると思います。使用している音もほぼ同じなので、こちらのアレンジを弾くとどんなハーモニーで進行しているのかもよくわかります。
細かい指の動きは苦手だけれど譜読みを頑張ってみたい、という方!こちらに挑戦してみてはいかがでしょうか?
バッハ「主よ、人の望みの喜びよ」
続いて、癒しのクラシックといえばバッハ。こちらの曲を挙げてみました。
ベートーヴェンとはまた違った旋律の美しさがあって、淡々と進む音楽に身をゆだねながら聴いたり、演奏したりできるので、とても心地よくなります。
「主よ、人の望みの喜びよ」は教会カンタータ(器楽と合唱のための作品)「心と口と行いと生活で」という作品の中の音楽です。この中の第6曲と第10曲(終曲)に「主よ、人の望みの喜びよ」の有名な旋律が入っています。
オランダのバッハ協会が紹介している演奏です。(第6曲16:09~、第10曲27:14~)
さまざまな楽器や編成で演奏される作品ですが、重厚感があり合唱さまざまがあるとやっぱり素敵ですね……。
まずご紹介したい初~中級のアレンジは、バッハのインヴェンションのように右手と左手それぞれがほぼ1声ずつなので譜読みもスムーズに進められそうです。
主よ、人の望みの喜びよ BWV 147(J.S.BACH) /ピアノ(ソロ) 初~中級
8分の9拍子はあまり見慣れないかもしれませんが、難しく考えず淡々と弾きつつ左手の3拍子に乗っかるようにするとよいと思います。
続いて、こちらは右手が重音になり左手もオクターブから始まるのでぐっと重厚感が出てくるアレンジです。
主よ、人の望みの喜びよ(Johann Sebastian Bach) /ピアノ(ソロ) 中級
右手は、ただハーモニーを足しているのではなくバッハらしく独立した旋律の動きが感じられます。
譜面どおりに演奏するには結構な弾き込みが必要だとは思いますが、「バッハを弾いている!」気分に浸れるのではないでしょうか……^^
ペダルも駆使しながら、響き豊かに演奏してみてください♪
こちらは番外編で、ジャズアレンジです。
主よ人の望みの喜びよ ジャズアレンジ(バッハ) /ピアノ(ソロ) 初~中級
バッハの旋律は意外とジャズと相性がよいような気がしているのですが、もとの旋律が少しずつ変化していくのを楽しみながらお洒落に演奏できるのではと思います。 譜面が4分の3拍子で書かれているのも見やすいですね!
グリーグ『ペール・ギュント』第1組曲より「朝」
最後はノルウェーの作曲家、グリーグの「ペール・ギュント」より、「朝」という作品です。この作品は、同じくノルウェーの劇作家ヘンリック・イプセンが作った戯曲(台本)に合わせて作られました。戯曲は、ペール・ギュントという主人公が旅に出て帰ってくるまでの物語です。
参考動画♪ Grieg: Peer-Gynt-Suiten | Konzert & Schauspiel | Corinna Harfouch | NDR Radiophilharmonie
北ドイツ放送エルプフィルハーモニー交響楽団の演奏です。曲と曲の合間に語りが入っています。(「朝」は02:27~)「朝」という題名にピッタリで、北欧の香りも漂ってくるような爽やかな音色ですよね。冒頭の旋律がモチーフとして繰り返される中で、少しずつ変化する響きがとても特徴的です。
そして、おすすめのピアノアレンジは、臨時記号にだけ注意は必要ですが、ハ長調で書かれているので譜面もすっきりしています。手をあまり開かず和音も弾きやすいのではと思います。
『ペール=ギュント』第1組曲より「朝」(ハ調アレンジ)(Edvard Hagerup Grieg) /ピアノ(ソロ) 初~中級
癒しがテーマなので「朝」をご紹介しましたが、組曲の中には他にも素敵な曲がいくつもあるので、組み合わせて演奏してみても楽しいかもしれません♪
参考動画の中では「山の魔王の宮殿にて」(15:30~)や、「アニトラの踊り」(33:42~)などが有名&特徴的で、おすすめです!
今回は「癒されるクラシック」をテーマにご紹介しました。いかがでしたか?
是非お気に入りの曲を見つけて、ご自身の演奏でピアノの音色に癒されてみてくださいね!
伊藤 優里(いとう ゆり)プロフィール
神奈川県出身。4歳よりピアノを始める。
桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部を経て同大学研究科修了。
第25回かながわ音楽コンクールシニアピアノ部門第1位。入賞記念コンサートにて神奈川フィルハーモニー管弦楽団とショパンのピアノ協奏曲を共演。
大学在学中よりヤマハピアノデモンストレーターとして活動を始める。
中学校時代には吹奏楽部に所属していた事から多方面の音楽に関心を持ち、本格的なクラシック曲から映画・ミュージカル音楽やジブリ、ディズニー等幅広いジャンルの演奏にも力を入れている。また近年は合唱や声楽、器楽とのアンサンブルのコンサートや、伴奏ピアニストとしても演奏活動を行っている。