こんにちは。ヤマハピアノデモンストレーターの伊藤優里です。
ピアノで楽しく弾ける楽曲やアレンジをいろいろご紹介していますが(前回までの記事はこちら)、今回は卒業をテーマに、春に弾きたくなる曲をご紹介したいと思います。
人気の卒業ソング「3月9日(レミオロメン)」
定番の卒業ソングといえば、この曲を思い浮かべるかたも多いのではないでしょうか。
卒業式で歌う曲といえば、昭和~平成の中ごろまでは合唱のために作られた曲が中心でしたが、この「3月9日」をきっかけに学校行事でもJポップなどのポピュラーソングが歌われるようになった気がします。(リリースは2004年の3月9日とのこと……もう20年近くも前なのですね!)
こちらは、オリジナルキーと同じアレンジで、♭(フラット)ひとつです。
左手の伴奏が、はじめは2分音符、曲がすすむにつれて音数が増えていき曲の盛り上がりを表現しています。
右手のメロディーは、歌っているようにのびのび弾きつつ、左手でしっかり拍を感じながらリズムを刻むことで、スケールのある演奏に仕上がるのでは、と思います。
また、曲のはじめに書かれている発想記号が「しあわせ」というのも印象的で、このアレンジをご紹介しました。
続いて、左手の8分音符がアコースティックギターの音色をそのまま表現できる、とても素敵なアレンジのご紹介です。
ぷりんと楽譜のサイトには参考演奏もあります♪
左手はオクターブを超える跳躍が多いので、慣れるまでは少し大変かもしれませんが、広い音域の演奏が得意なかたにおすすめです!
解説にも書かれていますが、強弱の変化が大きく、盛り上がってf(フォルテ)になったあとすぐにmp(メゾピアノ)に変わるなど、短い間でのクレッシェンドやディミヌエンドが特徴的なので、そのあたりもていねいに表現できるとよいです。
最後に、調号なしのシンプルな譜面で、左手があまり動かず五線の中におさまっているアレンジをご紹介します。
基本の手のポジションが決まっていて譜読みがしやすそうなのと、そのポジションが変わるタイミングで、注意ポイントとして★マークが付けられているのがわかりやすいです♪
まずは片手ずつ練習して、両手で合わせるときも視覚的に気をつけるタイミングがわかり、練習がはかどりそうですね!
卒業ソングの定番!「旅立ちの日に」「仰げば尊し」
続いて、私にとって卒業ソングといえば!な大好きな曲を挙げさせていただきました。
作曲者の坂本浩美さんは中学校の音楽教諭で、校長先生の作詞のもと1991年にこの曲を作り、2000年頃には全国の学校でも歌われるようになったそうです。
私は中学1年生のとき、3年生の卒業式ではじめてこの曲を歌ってとても感動したのを覚えています。自分が卒業するときにも歌いましたが、それよりも3年生を送るとき、1番の歌詞のあとの間奏で、先輩たちがこらえきれず大泣きしている声が聴こえてきたのが強く印象に残っています……
こちらのピアノアレンジは合唱での雰囲気をそのままに、伴奏と歌を1人で演奏して楽しむことができます。
そのぶん、伴奏の譜面よりも難易度は高いですが、学生時代を懐かしみつつピアノで演奏してみるのはいかがでしょうか。
続いては、なんと明治時代から歌われている定番の卒業ソング!これまでご紹介してきた2曲に比べるとより幅広い世代の方がご存じだと思います。学校ではシンプルな伴奏に合わせて歌われたのでは?と思うのですが、ピアノで弾けるとても素敵なアレンジをご紹介します。
仰げば尊し(アルペジオVer.)(文部省唱歌) /ピアノ(ソロ) 中~上級
参考演奏♪「仰げば尊し(アルペジオVer.)」
参考演奏♪も載せましたが、こちらはとてもピアニスティックで、イントロもあり一瞬なんの曲だろう?と感じるほどです。
題名にも添えられているようにアルペジオが特徴的で、8分音符→16分音符→最後は16分音符の3連符というように少しずつ細かいアルペジオに変化していきます。
8分の6拍子の曲は、大きく2拍子を感じて演奏すると流れが出てきれいです。さらにこのアレンジは、右手が一人二役のようになっているので、アルペジオの中でメロディーが浮き立つように、美しい演奏を是非目指してみてください……♪
初~中級で、弾き映えするアレンジもご紹介します。
曲の出だしは手の交差、後半はオクターブでのメロディー、さらに転調もあり、初~中級ながら弾き映え、見映えも(!?)華やかな演奏になるアレンジです。メロディーと伴奏が片手ずつに分かれている箇所は譜読みもしやすいですが、ところどころ左手から右手に引き継ぐようなところもあります。
まずは自分に合った指づかいを見つけて、それを弾き込んでいき、美しく仕上げてみてくださいね。
さらに春の雰囲気にぴったりな1曲をご紹介
最後に、卒業ソングではないですが……新しく何かをスタートすることの多い春に、背中を押して明るい気持ちにさせてくれる曲を!
割とアップテンポなので仕上げるのは簡単ではないと思いますが、余裕のあるかたはアーティキュレーション(右手のスラーやスタッカート、さらにはテヌートスタッカートもありますね!)を意識してみてください。
テンポが速くて弾ききれない……!というかたは、少しアーティキュレーションをまろやかに表現して、テンポを落としても、雰囲気が変わってそれもまた素敵な演奏になるのではと思います♪
今回は卒業シーズン~春に弾きたくなる曲をご紹介しました。いかがでしたか? 春は、環境が変わるなど、何かと慌ただしい季節ですが、是非ピアノでお気に入りの曲を演奏して気分を高めてみてくださいね!
伊藤 優里(いとう ゆり)プロフィール
神奈川県出身。4歳よりピアノを始める。
桐朋女子高等学校音楽科、桐朋学園大学音楽学部を経て同大学研究科修了。
第25回かながわ音楽コンクールシニアピアノ部門第1位。入賞記念コンサートにて神奈川フィルハーモニー管弦楽団とショパンのピアノ協奏曲を共演。
大学在学中よりヤマハピアノデモンストレーターとして活動を始める。
中学校時代には吹奏楽部に所属していた事から多方面の音楽に関心を持ち、本格的なクラシック曲から映画・ミュージカル音楽やジブリ、ディズニー等幅広いジャンルの演奏にも力を入れている。また近年は合唱や声楽、器楽とのアンサンブルのコンサートや、伴奏ピアニストとしても演奏活動を行っている。