オーケストラ演奏の臨場感をDolby Atmosで!ヤマハとドルビーのコラボレーションプロジェクト「Music Elements ORCHESTRA THEATER」にかける想い

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コンサートホールでのオーケストラ演奏を、Dolby Atmos®音声フォーマット配信するプロジェクトとして2022年にスタートした「Music Elements ORCHESTRA THEATER」。ヤマハとドルビーのコラボレーションによって実現した本プロジェクトでは、ホームシアターやマルチチャンネルのオーディオシステムで楽しむことができる高音質のコンテンツを制作し、現在VOL.1〜3が配信されています。プロジェクトメンバーである株式会社ヤマハミュージックジャパンAV・流通営業部専門店営業課の小林寛さんとドルビージャパン株式会社の近藤広明さんに、本プロジェクトにかける想いやコンサートホールの臨場感を届けるための挑戦の舞台裏をうかがいました。

ホームシアターの魅力を感じてもらうためのコンテンツ制作

-「Music Elements ORCHESTRA THEATER(以下、MEOT)」の企画がはじまった経緯を教えてください。

小林寛さん(以下、小林)
私はAV・ 流通営業部専門店営業課に所属しており、おもにご家庭でご利用いただくHiFiオーディオおよびホームシアター製品の営業活動を担当しています。これまでは、ヤマハの製品をオーディオ専門店で取り扱っていただくためのさまざまな販促活動や、商品の価値を伝える試聴イベントなどを開催していたのですが、今回のプロジェクトでは、ホームシアター製品の魅力を余すことなく伝えられるコンテンツを制作したいという想いがありました。

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(左)小林寛 株式会社ヤマハミュージックジャパン AV・流通営業部専門店営業課
(右)近藤広明 ドルビージャパン株式会社  技術部 テクニカル・マネージャー

-近年は国内外のコンサートや音楽フェスティバルなどの映像が配信プラットフォームを通して楽しむことができるようになりました。そのなかでも、音にこだわったものはまだ少ない現状があるのでしょうか?

小林
そうですね、高音質なオーディオシステムで再生できる環境を想定して制作されたコンテンツはまだ少ないと感じています。ディスクなどのメディアに記録された音声をそのまま配信している場合が多いので、MEOTでは、録音の時点から音声のクオリティにこだわり、再生したときに視聴者のご自宅にあるホームシアターはもちろんHiFiオーディオでもシステムクオリティが100%発揮できるようなコンテンツをつくりたいと考えたんです。

今回のプロジェクトでは、映像と音声において高い技術力を誇るドルビージャパンさんとのコラボレーションが実現し、クオリティの高い作品づくりに取り組むことができています。ヤマハのAVレシーバーは、数十年前からドルビーが展開する5.1チャンネルに対応しており、長く関係性が構築できていたことも、今回のプロジェクトがはじまった背景にあります。

また、これまでオーディオ機器に関する数多くの取り組みを進めてきましたが、AV・流通営業部が自ら配信コンテンツを制作することははじめての試みでもあります。そういった意味でゼロからのスタートとしての大変さがあったのですが、マイク配置のノウハウや、どういった編集をするのかなど、実際にコンテンツ制作に関わることでわかったことが多々ありました。プロジェクトを通して制作の背景にコミットすることで、今後お客様とのコミュニケーションにおいても、リアリティのある情報を提供していきたいと考えています。

オーケストラの演奏だからこそ発揮されるマルチチャンネルの魅力

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-ホームシアターの音質を感じるコンテンツを制作する上で、まずはオーケストラの演奏を録音することを選んだ理由を教えてください。

小林
クラシック音楽は他のジャンルよりも、オーディオシステムで再生することのハードルが高いというのが大きな理由です。ジャズやロックよりも大きな編成ですし、小さな音から大きな音までダイナミックに変化し、さまざまな楽器の音が一斉に音が立ち上がることもあるので、システムの実力を確かめる時には必ずクラシックを試すと言われています。録音も同様の理由で難易度が高く、そこにあえて挑戦することでオーディオシステムでの再生に活かす知見が得られると考えました。

また、天井の高いコンサートホールは音が上方向に広がっていき、左右の壁に反響することで後方にも広がっていくので、音に包まれるような臨場感が生まれます。加えてオーケストラの演奏は、管楽器の煌びやかさや弦楽器の落ち着いた木の質感など、楽器の美しさを目で楽しむものでもあるので、映像と組み合わせることで、コンサートホールの臨場感をトータルで感じていただけるコンテンツにできるのではないかと思います。

-今回のプロジェクトに込められた思いを実現する上で、どのような技術が採用されているのでしょうか?

近藤広明さん(以下、近藤)
Dolby Atmosはもともと映画館の音響システムとして開発されたもので、映画館で楽しめるような迫力のある臨場感、音に包み込まれるような体験をご家庭にも届けることができるサウンドシステムとして展開しています。

MEOTは、クラシックコンサートの録音となので、Dolby Atmosの醍醐味を感じることができる高さ方向の音の広がりをキャプチャーするために、天井に4つのスピーカーを設置することを想定した、「5.1.4」のサラウンドをつくり出す技術を採用しています。ヤマハさんの機器をはじめ、Dolby Atmosに対応した機器でご視聴いただくことで、ホールで鑑賞しているような全方向から音が鳴らされるライブ感をご家庭で体験することができます。

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コンサートホールの高さ方向の音の広がりをキャプチャーするマイク

-自宅でDolby Atmos のフォーマットを楽しむ上で、どのような環境が必要でしょうか?

小林
ホームシアターの基本的なセットアップでは、映像を鑑賞するモニターと複数のスピーカーをAVレシーバーに接続してシステムを構築します。なかでもスタンダードである「5.1チャンネル」では、左右2台のスピーカーとセンタースピーカーの1台、そして背面に2台の計5台のスピーカーを配置します。さらに「0.1」チャンネル分として、低音用のサブウーファーを設置するのが基本のレイアウトです。

MEOTはDolby Atmos で配信しているので、5.1チャンネルに加えて、4つのスピーカーを天井に配置する「5.1.4」チャンネル、 もしくは2つのスピーカーを上に配置した「5.1.2」 チャンネルで楽しんでいただきたいと思っています。高さ方向の音にこそコンサートホールのようなライブ感が宿るので、ぜひご自宅のオーディオで味わっていただきたいですね。

ホームシアターで広がる音楽鑑賞の楽しみ

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-今後Dolby Atmos に対応したコンテンツは増えていくと思いますか?

小林
そうですね、今後はさらに増えていくのではないかと思います。これまでは前方2つのスピーカーだけを使うステレオの環境で制作者が音楽を表現してきた歴史が続いてきましたが、徐々にマルチチャンネルでの表現が浸透してきたと思うので、たくさんのスピーカーを使用することを前提に、どのように感動を伝えられるのかを考えるクリエイターが増えていくだろうと考えています。

近藤
たとえばスポーツの分野では、スタジアムにいるような音響を感じられるように、ラグビーのワールドカップをDolby Atmos方式で配信するケースが過去にありましたし、最近では演劇の分野においても活用が進んでいます。

やはりコロナ禍に入った時期から、リアルでの開催が難しいイベントなどへの導入のためにお問い合わせいただくことは増えていますね。Dolby Atmosなら家にいながら現場にいるような音が楽しめるので、そういった点でご好評をいただいています。

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-最後に、プロジェクトの今後にかける想いや、MEOTをきっかけにDolby Atmosに興味を持った方へのメッセージをお聞かせください。

近藤
コンサートホールの響きを表現する上で、Dolby Atmosの形式はとても相性のいい組み合わせだと思います。なお、日本のDolby Atmosの普及率は世界的に見て非常に高いです。日本はオーディオに対しての意識の高い、耳の肥えたリスナーがたくさんいらっしゃる稀有な国でもあるので、そういった方に魅力的なコンテンツを届けられるよう、我々としても継続的に挑戦していきたいと思っています。

小林
MEOTはこれまでにVOL.3まで実施してきましたが、今後はよりプロジェクトを発展させて、新しい取り組みにも挑戦していきたいと考えています。

また、MEOTをさらに楽しむために、ホームシアターでまずはフラットな状態で視聴し、お好みに合わせてヤマハのAVアンプに実装されているシネマDSPのなかのコンサートホール系のプログラムの掛け合わせる、という方法も試していただきたいと思っています。

シネマDSPは、世界的に有名なコンサートホールの音の響き=「音場」を再現するHi-Fi DSPから発展した技術です。ヤマハが1986年に販売した世界初のデジタル・サウンドフィールド・プロセッサーであるDSP-1に実装し今日に至るまで改善を重ね、他社に負けない強みとして自信を持っています。世界中のコンサートホールやジャズクラブなど、ヤマハの研究チームがマイクで実測した音場のデータをデジタルで再現するというもので、ヤマハにしかない資産が活かされた技術でもあります。

なお、ご家庭の環境は、コンサートホールや映画館とは広さが異なりますし、家具などが配置されている場合がほとんどですが、ヤマハの製品の自動音場補正機能「YPAO」 をあわせてお使いいただくことで、お客様が聞いている部屋の音場を補正することができます。こういった楽しみ方ができるのも、AVレシーバーとホームシアターの奥深さだと思います。

MEOTの制作においては、ヤマハの製品の魅力をより際立たせるため機材やセッティングにこだわっています。ご自宅にまだホームシアターがない方は、まずは現在の環境でコンテンツを楽しんでから、お近くのオーディオ専門店でヤマハのAVレシーバーで再生したときのサウンドを聴き比べていただきたいと思います。これまでは、聴き比べるためにはディスクを持ち運ぶ必要がありましたが、MEOTのように配信コンテンツであれば店頭ですぐに試すことができるので、ぜひコンサートのライブ感をマルチチャンネルで体験していただきたいですね。

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撮影:木澤淳一郎(WESTGATE)取材・文・編集:堀合俊博(a small good publishing)

【関連情報】「Music Elements ORCHESTRA THEATER VOL.3」

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9月8日にライブ配信された「Music Elements ORCHESTRA THEATER VOL.3」は、現在「U-NEXT」にて配信中です。映像はDolby Vision、音声はDolby Atmosで楽しめます。

  • タイトル:Music Elements ORCHESTRA THEATER VOL.3 Live streaming with Dolby Atmos "Stories"
  • 配信期間:2023年9月29日~2024年9月28日
  • 料金:「U-NEXT」アカウントをお持ちの方は無料 ※31日間無料体験実施中
  • 詳細:以下「U-NEXT」のウェブサイトをご覧ください。
    https://video.unext.jp/title/SID0094241
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