<大人の社会科見学>ヤマハの約130年の歴史と最新技術を体験!「イノベーションロード」

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静岡県浜松市のヤマハ本社にある「イノベーションロード」は、ヤマハが手がけてきた楽器やオーディオ機器などが一堂に展示されている企業ミュージアムです。楽器の構造がわかるハンズオン展示や、膨大な数の試奏コーナー、最新技術が活かされた体験型展示など、学びと発見に満ちた空間を楽しむことができます。この記事では、館長を務める伊藤さんの解説とともに、展示の見どころをご紹介していきます。

ガイドはこの方!

220908_innovation_01.jpgイノベーションロード館長
伊藤 泰志さん

1997年まで、現在の株式会社ヤマハミュージックリテイリングで鍵盤楽器の営業や音楽教室運営を経験。その後ヤマハ株式会社にて、2015年まで広報、宣伝、ブランドマネジメントを担当。2015年以降は株式会社ヤマハコーポレートサービスで、メディアプロダクション事業に従事。

 

ヤマハのものづくりを伝える企業ミュージアム「イノベーションロード」

2018年にオープンしたイノベーションロードは、ヤマハ本社の正門を入ってすぐのところに位置します。ここは、もともとピアノ工場があった場所です。1887年創業のヤマハにとって念願だった企業ミュージアム開設の背景には、ヤマハのことをより多くの人に理解していただくための場所を設けることで、共創活動が生まれるきっかけをつくりたいという想いがありました。

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社屋前の横断歩道はさりげなく鍵盤模様に。ヤマハの遊び心を感じさせます。

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エントランス空間では穏やかに眠る2匹の白熊の親子が来場者を迎えます。

ヤマハのフィロソフィーを伝えるプロローグ映像

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入口では、ヤマハの企業理念である「感動を・ともに・創る」を表現した2分間の映像が上映されています。

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伊藤さん
映像を通して、『イノベーションロードにようこそ』という私たちの思いと、ヤマハの事業にかける想いを感じてもらえればと思います。

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同じく入口に設置されているのは、バイオリンとサックスがそれぞれ3モデルずつ並ぶ「コンセプトステージ」です。2017年にグッドデザイン大賞を受賞したカジュアル管楽器「ヴェノーヴァ」や、斬新なデザインで新たな音楽表現に挑んだ5弦エレクトリックバイオリン「YEV105」など、伝統的なものづくりと革新的な楽器づくりに挑戦するヤマハのフィロソフィーを伝える楽器が展示されています。

創業から約130年の歴史を歩く「ヒストリーウォーク」

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右側の壁面全体を覆う「ヒストリーウォーク」では、ヤマハがこれまでに手がけてきた約200点もの製品を鑑賞することできます。オルガンづくりからはじまったヤマハの歴代の楽器をはじめ、電子楽器やオーディオ機器の実物が展示されています。

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ヒストリーウォークの冒頭には、創業者・山葉寅楠を象った銅のプレートがシンボリックに展示されています。

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エレキギターと並んで展示されているのは、ヤマハ発動機設立のきっかけとなったオートバイ「YA-1」。1955に発売され、スリムなデザインと栗茶色のボディから、通称“赤トンボ”として親しまれたモデルです。

展示は年代ごとに区切られており、楽器やオーディオ機器だけではなく、現在のヤマハのイメージからは意外に感じられる製品も展示されています。当時の貴族院(現参議院)内の議席に使用されるほど盛んに製造されていた木工家具や、陸軍機に使用されたプロペラ、オリンピック選手も愛用したスポーツ製品、ホームコンピューターなど、すでに生産終了した貴重な製品の実物の展示から、ヤマハが歩んできた長い歴史を感じることができます。

ヤマハのクラフトマンシップを感じる「ものづくりウォーク」

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ヤマハの楽器づくりのプロセスを解説した展示コーナー「ものづくりウォーク」では、ハンズオン展示を通してピアノ・ギター・管楽器などの構造を学ぶことができます。

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ピアノの「響板・響棒」。展示に備え付けられているオルゴールを響板に当てると、木材の響きだけで音が増幅されるのがわかります。

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ヤマハが設けている塗装基準“ピアノブラック”について解説された展示。

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伊藤さん
ヤマハで製造されているピアノは、黒色度、滑らかさ、光沢度のそれぞれを満たすことで、はじめて世に送り出されます。

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木工技術の解説コーナーでは、木の加工を行う職人たちが使用している道具の展示も。

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管楽器の金属加工のコーナーでは、一枚のイチョウ型の金属板をハンマーで叩くことで成形されていく「一枚取り」という手法が解説されています。

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伊藤さん
楽器は工業製品であると同時に工芸品でもあるので、美しさがとても大切なんです。一見すると地味かもしれない職人たちの匠の技の積み重ねによって、伝統的なアコースティック楽器は生み出されています。

歴史ある楽器の精緻な構造に驚くとともに、ヤマハで働く職人たちのクラフトマンシップを感じる展示です。

伝説的なモデルから最新機種まで、ヤマハ製シンセサイザー発展の歴史

キーボードの展示コーナーでは、1983年に発売したデジタルシンセサイザーの名作「DX7」をはじめ、数多くのミュージシャンに愛用されてきた歴代の楽器が並びます。

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コーナーの中央では、ヤマハの伝説的なモデルのキーボードと、それらのサウンドを引き継いだ最新の小型キーボードシリーズ「reface」が対置されています。

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(上から)世界ではじめて物理モデル音源をベースにしたシンセサイザー「VP1」、ポール・マッカートニーや坂本龍一も愛用したアナログシンセサイザー「CS 80」、「DX7」の上位機種として発表された「DX1」。いずれも現在では入手困難な貴重なモデルを、実際に音を鳴らして体験することができます。

世界中のミュージシャンが愛したヤマハの製品

楽器メーカーとしての長い歴史の中で、ヤマハの製品は多くの世界的ミュージシャンに愛されてきました。イノベーションロード内では、ミュージシャンが実際に使用した楽器の展示のほか、さまざまなミュージシャンとの親交を伝えるエピソードが紹介されています。

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20世紀最大のピアニストのひとりと言われる、ロシア出身のスヴャトスラフ・リヒテルが、1994年の最後の来日時に使用したグランドピアノ「CFⅢS」。

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伊藤さん
当時、上演中のステージでは照明を極限まで落としていたため、リヒテルの姿が幻想的に浮かんで見えたそうです。

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ボディに貝を素材とした仏陀の模様があしらわれた「SG-175Buddha」は、1974年に来日したカルロス・サンタナのリクエストに答えて作られました。コーナーでは、1996年にヤマハエレキギター30周年を記念して、国内限定50本で発売された復刻モデルが展示されています。

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90年代のサウンドが味わえるシンセサイザー「EOS」。音楽プロデューサー・浅倉大介さんのサインが確認できます。

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アマチュアミュージシャンを対象に、1969年から1986年まで、ヤマハが主催していた「ポピュラーミュージックコンテスト」。(69年~年までは「作曲コンクール」、72年に改称)

 

中島みゆきやクリスタルキングなど、数多くのミュージシャンを輩出してきた通称“ポプコン”の展示コーナーでは、楽器製造メーカーだけではなく、音楽が生まれる環境や文化を育むことにも取り組んできたヤマハの歴史的な歩みを知ることができます。

音楽の未来を想像する、ヤマハの最新技術

「イノベーションロード」という施設名の通り、ヤマハは伝統的な楽器づくりだけではなく、最新のテクノロジーを用いた研究開発やイノベーションの探求にも取り組んできました。館内では、技術革新へのヤマハの積極的な姿勢を感じるコーナーも数多く設置されています。

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立体音響技術が体験できる「スーパーサラウンドシアター」

イノベーションロードの一番奥に設置されている「スーパーサラウンドシアター」は、ヤマハ独自の立体音響技術「ViReal™(バイリアル)」が活用された空間。108.6チャンネルのスピーカーが設置されており、映像と音に包まれる体験ができるコンテンツが上映されています。

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ヤマハの最新技術を体験できる「イノベーション・ラボ」

「イノベーション・ラボ」では、まだ製品化される前のヤマハの最新技術を体験できます。人工知能によって歌い手のニュアンスを表現する「AI Artist Stage」や、わずか5mmの薄型スピーカー「Flatone™️」など、ヤマハが構想する音楽とテクノロジーの未来にワクワクするような展示が並びます。

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「音響展示エリア」の「バーチャルステージ」ではアーティストの演奏を再現

「音響展示エリア」内のステージでは、ヤマハが開発した「Real Sound Viewing」による「バーチャルステージ」を体験。アーティストの演奏を保存・再現するシステムで、ピアノは、アーティストのプレイを自動演奏で再現し、ベースとドラムはオーディオ信号を振動に変換して楽器をスピーカーのように鳴らすため、生演奏を目の前で聞いているような臨場感を味わえます。

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伊藤さん
将来このシステムが普及することによって、チケットの入手が困難なアーティストのライブや、すでに亡くなってしまったミュージシャンの幻のライブパフォーマンスが体験できるようになるかもしれません。

はじめての演奏にも挑戦できる試奏コーナー

展示されている楽器の多くが試奏可能なことも、イノベーションロードの大きな魅力です。ヤマハのコンサートグランドピアノの最高峰モデルだけではなく、2008年にヤマハのグループとなったウィーンの老舗メーカー「ベーゼンドルファー」のピアノも展示されているので、実際に弾き比べて音の違いを感じてみてください。

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ピアノの試奏コーナー

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ギターの試奏コーナー

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伊藤さん
なかなか触れることのできない楽器もあるので、音を鳴らしてみて感動されるお客様もたくさんいらっしゃいます。

マリンバやドラムといった打楽器や、サイレントバイオリンやエレクトリックバイオリン、サイレントチェロなどの弦楽器も展示されているので、はじめて触れる楽器の演奏に挑戦できることもイノベーションロードの醍醐味です。

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大型金管楽器のスーザフォンの展示スペースは撮影スポットにもなっています。演奏者の気分でぜひ記念の一枚を。

音楽の楽しさが呼び起こされる場所として

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伊藤さん
訪れた方々からいただく感想の中には、『また楽器を弾きたくなりました』という声が多いですね。皆さまのご来場をお待ちしております。

イノベーションロードは、普段から音楽に親しんでいる方はもちろん、楽器演奏から遠ざかってしまっていた方にとっても、音楽を楽しむ気持ちが呼び起こされる場所です。この記事でご紹介できた展示はあくまでごく一部ですので、実際に音を鳴らしてみることで生まれる感動を、ぜひ体験してみてください。

写真:中川良輔 取材・文・編集:堀合俊博(a small good publishing)

イノベーションロードについてはこちら

 

【受付終了】プレゼントキャンペーン

記事をご覧になった方に抽選で、イノベーションロードのオリジナルグッズをプレゼントします。ぜひ、ご自宅でもお楽しみください。
※お申し込みには、アンケートの回答が必要です。

プレゼント

イノベーションロードオリジナルグッズ、「ナノブロック」3種類をそれぞれ5名、計15名様

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写真左より
(左)ナノブロック ヴェノーヴァ(VENOVA™ / YVS-100) 5名
(中央)ナノブロック サイレントギター(SILENT GUITAR™ / SLG100N) 5名
(右)ナノブロック ショルキー(SHOLKY™ / SHS-10) 5名

お申し込み期間

2023年06月13日 (火) ~2023年7月16日 (日) 23:59

お申し込み方法

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