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ジョー・ボナマッサが弾くロリー・ギャラガー。トリビュート・ライヴ・アルバム発表

アルバム『The Spirit Of Rory: Live In Cork』

ジョー・ボナマッサの最新ライヴ・アルバム『The Spirit Of Rory: Live In Cork』が2026年6月に海外でリリースされた。
ソロ・アーティストとして、またブラック・カントリー・コミュニオンの一員として、ブルースとロックの境界線を飛び越えて活躍するギタリストとして支持を集めるジョー。本国アメリカはもちろんイギリスやヨーロッパでも人気を誇っている。日本でも何度か売り出しが図られたが、“黒船”なる珍妙なキャッチがむしろマイナスに働いたのか、ここ10年は来日も途絶え、国内盤CDも発売されなくなったのが残念だ。

ジョー・ボナマッサが受け継ぐブルース

自らがギタリスト/シンガー/ソングライターとして活躍するジョーだが、近年クローズアップされてきたのが、ブルースのアンバサダー/キュレーターとしての側面だ。
1977年、ニューヨークに生まれた彼はロック好きの父親からの影響で、4歳でギターを始め、8歳のときにエリック・クラプトンが弾く『ファーザー・オン・アップ・ザ・ロード』を聴いて本格的に音楽に開眼。ジェフ・ベックやフリーのポール・コゾフをコピーしまくり、12歳でB.B.キングとジャムを行うまでに成長している。
さまざまなロックやブルースを吸収、自分の血と肉にしてきたジョーだが、それを具体的に形にしたのが『British Blues Explosion Live』(2018)だった。2016年7月7日、ロンドン郊外グリニッチ公演を収めたこのライヴ・アルバムは全曲がエリック・クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジという3大ギタリストがギターを弾いてきたクラシックスだ。クリーム、ジェフ・ベック・グループ、レッド・ツェッペリンなどのナンバーを楽しみながらプレイ、若い層の音楽ファンのために新しい扉を開くことになった。
さらにジョーは2025年に『B.B. King’s Blues Summit 100』を総監修/キュレーションしている。B.B.キングの生誕100周年を記念する全32曲のこのアルバムはバディ・ガイ、デレク・トラックス、ボビー・ラッシュ、ジョージ・ベンスン、ラリー・カールトン、クリストーン“キングフィッシュ”イングラムなど新旧世代のブルース・プレイヤーが参加、“キング・オブ・ザ・ブルース”への愛情と敬意を表している。
そしてジョーがロリー・ギャラガーへのありったけのリスペクトを込めたのが『The Spirit Of Rory: Live In Cork』なのだ。

ロリー・ギャラガーへのトリビュート

ロリー・ギャラガー(1948 – 1995)はアイルランドを代表するロック/ブルース・ギタリストの1人だ。塗装のハゲたギターを手に、ハートのありったけを曝け出すプレイは多くのファンを生んできた。
『いれずみの女』『100万マイルも離れて』など名曲を書いてきたロリーだが、その人気を決定させたのが火を噴くライヴ・パフォーマンスだった。彼のキャリアにおいて名盤と呼ばれるのは『ライヴ・イン・ヨーロッパ』(1972)『ライヴ・イン・アイルランド』(1974)『ステージ・ストラック』(1980)などのライヴ・アルバムであり、熱気と汗と涙が溢れ出るステージは“伝説”となっている。ジョーが魅せられたのも、そんなロリーのライヴ・パフォーマーぶりだろう。
筆者(山﨑)がジョーにインタビューしたのは2010年の来日時の一度のみだが、グレン・ヒューズらとのバンド、ブラック・カントリー・コミュニオンが始動する少し前のことで、グレンの古巣だったトラピーズのメル・ギャレイについて、こう形容していた。
「マーク・ボランをブルージーにして、ロリー・ギャラガーをよりロックにしたようなスタイル。大好きなギタリストなんだ」
直接ロリーについて語ったわけではないものの、彼の愛情が伝わってくる。
彼はまたアイルランドでショーを行うとき、何度か遺族からロリーのギターを借りて、数曲で弾くこともあった。
『The Spirit Of Rory: Live In Cork』は2025年7月1〜3日、ロリーが育ったアイルランドのコークで行われた“ライヴ・アット・ザ・マーキー”フェスのステージを収録したアルバム/映像作品だ。その前年、2024年にこのイベントが発表された際にアコースティック・パフォーマンスが行われたが、この3日間ではエレクトリック編成のステージを披露。3日のベスト・テイクをピックアップしている。
『クレイドル・ロック』からスタート、『メッシン・ウィズ・ザ・キッド』『ブルフロッグ・ブルース』などを交えた『ライヴ・イン・ヨーロッパ』『ライヴ・イン・アイルランド』からのハイライトに加えて、1970年代後半の“クリサリス”レーベル在籍期から『コーリング・カード』『バッド・ペニー』もプレイされる。『ブルフロッグ・ブルース』で長年ロリーの相棒だったベーシスト、ジェリー・マカヴォイがゲスト参加しているのも嬉しい。
独自のギター・スタイルを確立しているジョーゆえ、ロリーのコピーに留まっていないのも聴きどころだ。『100万マイルも離れて』はより起伏に富んだアレンジで、ジェイド・マクレイの女性ヴォーカルとのデュエットも効果的。ロリーが短期間のみライヴ演奏していた『アイ・フォール・アパート』にも新しい生命が吹き込まれている。ロリーのハーモニクスを交えたキコキコするリード・プレイでなくジョーの流れるようなソロはかなりタイプが異なるが、時にすれ違い、時に呼応しあうのがスリリングだ。
なおブルーレイ/DVDにはミニ・ドキュメンタリーとブライアン・メイ(クイーン)とスラッシュ(ガンズ&ローゼズ)のインタビューも収録されている。
ロリーが亡くなってから30年以上が過ぎたが、その音楽は聴かれ続けている。未発表音源を収めたアルバムは最近では1990年のライヴを収めた『All Around Man – Live In London』(2023)が発表されたし、2024年には彼のギター・コレクションがオークションにかけられ大きな話題を呼んだ。彼の出生地バリーシャノン、そして活動拠点とした時期もあるベルファストには銅像も建っている。2026年に入ってからのロリーのギター写真集『Gallagher’s Guitars: The Rory Gallagher Collection』が刊行されたし、9月にはロリーの実弟でマネージャーだったドナル・ギャラガーの回顧録 『Edged In Blue: A Rock & Roll Odyssey With Rory Gallagher』も予定されている。
ロリーの名前を冠した“ロリー・ギャラガー・インターナショナル・フェスティバル”がバリーシャノンで毎年開催され、2026年のイベントにはビリー・ギボンズ(Z.Z.トップ)がヘッドライナーとして出演。チケット業者の経営破綻の巻き添えで存続が危ぶまれているが、ロリーの音楽はこれからも聴き継がれるだろう。『The Spirit Of Rory: Live In Cork』はそのタイトル通り、ロリーの精神を生かし続けるアルバムだ。

■アルバム『The Spirit Of Rory: Live In Cork』

アルバム『The Spirit Of Rory: Live In Cork』
発売元:J&R Adventures
発売日:2026年6月
詳細はこちら
ロリー・ギャラガー公式サイト

文/ 山﨑智之

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2026.07.21
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