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PIG(レイモンド・ワッツ)が2026年6月に来日公演。インダストリアルの歴史に深く関与、ブタは舞い降りる

PIG(レイモンド・ワッツ)が2026年6月に来日公演。インダストリアルの歴史に深く関与、ブタは舞い降りる

PIGの日本公演が2026年6月に行われる。5月にニュー・アルバム『Hurt People Hurt』を発表、そのキャリアにおける何度目かのピークを極めようとしている彼の来日ステージには期待が高まるばかりだ。

PIGはレイモンド・ワッツのソロ・プロジェクト。1961年、英国ロンドン郊外出身の彼はインダストリアル・ミュージックの歴史に深く関与してきたアーティストだ。1980年代初めから音楽活動を開始した彼はサイキックTV、アインスツルツェンデ・ノイバウテン、ジム・フィータスといったインダストリアル・ミュージックを代表する面々と交流、KMFDMの結成にも関わってきた(ザ・ヒット・パレードの一員としても活動)が、自らがすべてをコントロールするプロジェクトとしてPIGを始動させ、1988年にファースト・アルバム『A Poke In The Eye… With A Sharp Stick』を発表している。

同作はアメリカではインダストリアル・ミュージックの震源地となった“ワックス・トラックス!レコーズ”からリリースされ、随所でヘヴィなギターをフィーチュアしながら、後の“インダストリアル・メタル”とは一線を画するコントロールされたサウンドが支持を得る。1994年にはナイン・インチ・ネイルズのツアー・サポートを務めるなどしてきたPIGだが、メインストリーム市場でのブレイクは果たすことがなく、世界的な“オルタナティヴ”の潮流に呑み込まれ、消費されようとしていた。

PIGと日本の長く深い関わり

そんな中、レイモンド=PIGを常に熱狂的に受け入れてきたのが日本の音楽リスナーだった。

PIGと日本のシーンの関わりは長く深い。レイモンドが初めてこの国を訪れたのは1981年、日英混成ユニット、アリソン&フォニックのレコーディングだった。1995年に行われた筆者(山﨑)とのインタビューで「まともにギャラも出ずに4か月、最低の音楽のバッキングをやらされた」と否定的な発言をしているこのセッションだが、彼と日本の繋がりができたという点では有意義だったといえる。

PIGの『The Swining』(1993)は当時日本のみのリリースだったし、『Sinsation』(1995)も日本で先行発売されている。さらに彼は1991年、今井寿(BUCK-TICK)、藤井麻輝(当時SOFT BALLET)とSCHAFTを結成。さらに2001年には今井、櫻井敦司(BUCK-TICK)、サシャ・コニエツコ(KMFDM)とSCHWEINを結成するなど、日本市場を主なターゲットとしたプロジェクトを組んできた。 しばらく距離を置いていた時期もあったものの2、3年前にはプライベートで訪日するなど、本邦との関係はスペシャルなものだ。“Hurt People Hurt”Tourと題された今回の公演は、もはや行われねばならかった必然だろう。

“ブタ”に新しい意味を与えたインダストリアル

PIGというプロジェクト名、『Praise The Lard』(“主を讃えよ”+lard)『A Sytroll In The Pork』(“公園の散歩+pork”)『The Swining』(“シャイニング”+swine)など、しばしば“ブタ”をモチーフにしているレイモンドだが、その理由について筆者にこう語ってくれた。

「PIGという単語は覚えやすいし、いろんな意味を想起させる。それにブタは犬なんかよりキレイ好きで頭が良いのに汚いブタ小屋に入れられている。“掃きだめの鶴”みたいな意味が込められているんだ」

興味深いのは、1980年代末から1990年代初のインダストリアル界に一種のブタ・ブームが起こったことである。1988年にはPIGと同時多発的にアル・ジュールゲンセン(ミニストリー)とジェロ・ビアフラ(デッド・ケネディーズ)のプロジェクト、ラード(ブタの脂の意味)が始動。また1990年にはマーティン・アトキンス(キリング・ジョーク)とビル・リーフリン(ミニストリー)がピッグフェイスを始動させている。なおレイモンドは後者について辛辣で、「“ワックス・トラックス”に既にPIGがいるのにぶつけてきた。音楽も退屈だし、和気あいあいとやってるフリをしているのが最低」と語っていた。

なおナイン・インチ・ネイルズはチャールズ・マンソンの“ファミリー”が1969年にシャロン・テイトらを殺害したことで知られる邸宅で『The Downward Spiral』(1994)を録音。犯人グループが扉に“PIG”と落書きした逸話から“ル・ピッグ”スタジオと命名、『March Of The Pigs』『Piggy』などの楽曲もレコーディングされている。

さらにロブ・ハルフォード(ジューダス・プリースト)が1990年代後半に組んでいたインダストリアル・メタル・バンド2woが『I Am A Pig』という曲を発表するなど、インダストリアルのあちこちにブタが溢れていたのである(レイモンド自身のSCHWEINもドイツ語でブタという意味だ)。

それまでザ・ビートルズの『Piggies』やピンク・フロイドの『Pigs』など、ポピュラー音楽におけるブタはジョージ・オーウェルの小説『動物農場』(1945)を踏襲した“肥え太った怠惰な存在”の象徴だったが、インダストリアル・ミュージックはまったく新しい意味を与えることになったといえる。 ギタリストに ジム・デイヴィス(元プロディジー)、ドラマーにSCHAFTで共演した MOTOKATSU MIYAGAMI(THE MAD CAPSULE MARKETS)を迎えての来日公演。2026年6月、日本にブタが舞い降りる。

PIG - Tosca's Kiss

■アルバム『Hurt People Hurt』

アルバム『Hurt People Hurt』
発売元:Metropolis Records
発売日:2026年5月22日
詳細はこちら
アーティスト公式サイト

■PIG(Raymond Watts)“Hurt People Hurt”Tour

2026年6月25日(木)東京・高円寺HIGH 追加公演
2026年6月26日(金)東京・高円寺HIGH
詳細はこちら

 

文/ 山﨑智之

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2026.04.27
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