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Phase70:ラヴェルのピアノ三重奏曲、花房晴美が挑み続ける精密記譜、聴こえないほどの魅力を伝える(クラシック名曲 ポップにシン・発見)

Phase70:ラヴェルのピアノ三重奏曲、花房晴美が挑み続ける精密記譜、聴こえないほどの魅力を伝える(クラシック名曲 ポップにシン・発見)

フランスの作曲家モーリス・ラヴェル(1875~1937年)は精密機械と称される技巧的な記譜で知られる。ドイツの対仏宣戦布告という国家存亡の危機の中で速筆した「ピアノ三重奏曲イ短調」も精緻な記譜が際立つ。ピアニストの花房晴美は共演者を変えつつ何回もこの三重奏曲に挑み続けている。楽譜を見なければ気付かず、聴こえないほど精密な音色の魅力をいかに聴き手に伝えるか。軍への入隊を決意したラヴェルの前半生の集大成を聴こう。

一音ごと細かいニュアンス

2026年3月5日、東京文化会館小ホールで開かれた「花房晴美室内楽シリーズVol.2パリ・音色の世界」。最初の曲目が花房の十八番であるラヴェルの「ピアノ三重奏曲」だった。この日のヴァイオリンは竹澤恭子、チェロはこれまでも同曲で花房と共演してきた横坂源。花房のピアノは一段と進化し、知性と感情が交錯するラヴェルらしい精巧で艶やかな音色を出していた。竹澤のヴァイオリンも歌謡性と攻撃性を併せ持つ演奏がこの作品の本質をひき出しそうで新鮮だった。しかしアンサンブルと全体のバランスは今一つで惜しかった。

終演後に話を聞くと、竹澤の体調が回復したばかりで十分な調整ができなかったようだ。「ラヴェルが意図した通り、ヴァイオリンは一音ごと細かいニュアンスを出したい。それができる竹澤さんにお願いした」と花房は語る。この3人の三重奏はこんなものではない。良好なコンディションでの再演に期待したい。ちなみにこの日は同じ3人でメンデルスゾーンの「ピアノ三重奏曲第1番ニ短調Op.49」、ヴィオラの田原綾子とコントラバスの加藤雄太が加わってシューベルトの「ピアノ五重奏曲イ長調《ます》Op.114, D.667」も演奏された。このうち「ます」は見事にまとまって楽しい秀演だった。

ラヴェル「ピアノ三重奏曲イ短調」の弦楽器の主な特殊奏法
ハーモニクス(フラジオレット)
第1楽章の消え入るような終結部で顕著に用いられる
重音ピツィカート
特に第1、2、4楽章でヴァイオリンとチェロが頻繁に使用
弱音器の使用
第3楽章で弦が非常に静かな音色を奏でる際に使われる
ハーモニクスのアルペジオ(分散和音)
第4楽章冒頭でヴァイオリンが輝かしく透明な音色で高速に弾く
ハーモニクスの重音トレモロ
第4楽章冒頭でチェロが高音域で演奏する
非常に長く持続するトリル
第4楽章でヴァイオリンとチェロが熱狂的に使用する場面が頻出

 

花房によるラヴェルの「ピアノ三重奏曲」の中で最も秀逸だったのは2023年11月17日、東京文化会館小ホールでの「花房晴美室内楽シリーズ パリ・音楽のアトリエ第24集モティーフの源」。ヴァイオリンは木野雅之、チェロは横坂。上皇上皇后両陛下がご鑑賞された。精緻で精細なアンサンブル、抑制が効いてまとまりがあり、古典的な形式美も浮き彫りになる秀演だった。このほか花房はそれぞれヴァイオリンとチェロでジェラール・プーレと藤森亮一、徳永二男と横坂、徳永と向山佳絵子ともこの曲で共演してきた。

何回も挑むライフワークに

花房がフランス音楽の第一人者として、ドビュッシーやフランク、フォーレなどとともにラヴェルの作品にこだわり、特に「ピアノ三重奏曲」の再演を重ねている理由は何か。「ドビュッシーとは違って、ラヴェルは音の一つひとつというくらいに演奏の細かい指示を楽譜に書き込んでいます」と花房は語る。

「楽譜を詳細に分析しないと分からないレベルで、聴こえないほど細かい音のニュアンスの指示をしています。そんな精密なラヴェルの意図を聴き手に何とか伝えたいとの思いで何回も挑んでいます」。花房は2027年4月22日に日本製鉄紀尾井ホール(東京・千代田)で開く「日本デビュー50周年記念演奏会〈第一夜ソロ・リサイタル〉」でドビュッシーの「前奏曲集第1集、第2集」全曲演奏を予定している。花房は室内楽のラヴェル「ピアノ三重奏曲」をソロのドビュッシー「前奏曲集」と並ぶライフワークと位置付けている。

ラヴェルの細かい指示を忠実に守れば、作曲家が意図した色彩を再現することができるはずだ。演奏者の自由な解釈を許す余地が少ないのはマーラーの交響曲と似ている。だが楽譜を読み込んでラヴェルの本来の意図を正確に突き止めること自体も容易ではない。

Ravel: Piano Trio, M. 67: I. Modéré

ラヴェルの記譜は単に音の強弱や速度変化、奏法、音色の指示語が詳細であるのではない。タイや休符の配置で音符の長さや減衰も細部まで管理する。異なるリズムの同時進行や変拍子によっても音色の微細な変化が生じる。演奏者全員が問題文を正確に読み取って満点を取るのは至難の業だから挑戦し甲斐がある。ジャリ、プルーデルマッハー、トゥルヌ盤(1970年録音、旧EMI、ワーナー)を筆頭に、ボザール・トリオ盤(1983年録音、旧フィリップス、ユニバーサル)、パールマン、アシュケナージ、ハレル盤(1994年録音、旧デッカ、同)などの名盤がある。演奏時間約28分の全4楽章を分析しよう。

分数和音の幻想的な浮遊感

第1楽章モデレ(モデラート)はイ短調、8分の8拍子。自由なソナタ形式。ピアノが第1主題を静かに提示する。この小楽節は4小節ともリズムが3+2+3=8拍子のオスティナート。調号と最初の和音はイ短調だが、バスク民謡風の旋律は実際にはE(ホ)を主音(終止音)にしたエオリア旋法(Eエオリアン)と捉えられる。古風な趣は教会旋法によるものといえる。第1主題に漂う浮遊感は、イ短調でありながら、主音のA音ではなくE音が中心に居座り続けるため、トニックやドミナントといった和声の機能が曖昧になるからだ。

ラヴェル「ピアノ三重奏曲」第1楽章第1主題

ラヴェル「ピアノ三重奏曲」第1楽章第1主題

教会旋法を用いたラヴェルの書法は線的でポリフォニック(多声的)と思えるが、第1楽章冒頭の第1主題では、ピアノが旋律を和音で弾く。ハーモニックリダクション(和声の還元)をして調べると、1小節目が「Am - Am/E - Bm/E - Am/E - Bm/E - C/E- Bm/E」。右手にフランス印象主義風の平行移動的な和音進行「Am→Bm」がある。2小節目は最初の「Am」が「Am/E」に変わる。冒頭こそイ短調(Am)だが、左手がペダルポイント(持続低音)風に音高を変えてE音を鳴らし続け、Eエオリアンの旋律とE音をベースにした分数和音が幻想的な浮遊感を出す。

3小節目は内声がB♭音からB、C、B音へと半音階的に進行するが、コードネームで表すと「B♭/E - B♭/E - Esus2 - Gsus4/E - Esus2 - FM7/C - Bsus4/D - Bm/E」。このうち「B♭/E」は不安定なトライトーン(増4度、減5度)を形成するE音とB♭音を含む。だがトライトーンは機能和声的な解決に向かわず、浮遊感と曖昧さが漂う「Esus2」が続く。4小節目は伝統的な機能和声とは異なり、「C#m(omit5)/E」がイ長調(A)ともホ長調(E)ともいえない余韻を漂わせて終止する。

非常に短い再現部と終結部

第1楽章冒頭の4小節だけで長口上になってしまった。花房が言うように、この作品を探究し続けたら確かにライフワークになるだろう。続いてヴァイオリンとチェロが加わって第1主題を奏でた後、ピアノが激しい経過句を鳴らす。これは第1主題の変奏といえる。ヴァイオリンから始まる第2主題もイ短調で、郷愁を誘う美しい旋律だ。第1楽章は全部で117小節あるが、第1、2主題の提示部は51小節まで。52小節目から長い展開部に入る。第2主題の変奏を交えながら、ピアノが静かな分散和音を弾き、弦が第1主題の断片を幻想的に浮かび上がらせる。急に激しさを増しては静寂に戻るなど、静と動が交錯する。

再現部は108小節目からで、わずか4小節しかない。「lointain(ロワンタン、遠くで)」の発想用語が添えられ、ピアノが第1主題の1小節目の最初の和音をイ短調から平行調のハ長調(C)に変えて、ピアニッシモで弾き始める。4小節目の旋律のB音がB♭音に変わり、属七の和音(C7)に近似した響きを漂わせるため、ヘ長調(F)で終わりそうな気配を一瞬醸し出すが、ハ長調で終止する。終結部(コーダ)も6小節しかなく、弦によるハーモニクスの音色を交えながら、消え入るように夢幻のハ長調で閉じる。遠い追憶の再現部と終結部はおぼろげで非常に短い。

第2楽章パントゥーム、 アッセ・ヴィフ(アッサイ・ヴィヴァーチェ)は活発で研ぎ澄まされたスケルツォ楽章だが、不気味で異様な「悪魔のワルツ」ともいえる。「パントゥーム」とはフランスロマン主義の文豪ヴィクトル・ユゴーが西欧に紹介したマレー語の韻文詩。独立した2句を平行して詠む詩の形式のように、中間部は弦の4分の3拍子とピアノの2分の4拍子が同時並行で進む。さらには逆に弦が2分の4拍子、ピアノが4分の3拍子へと交替して同時に進行する。異国情緒のある旋律と和声を伴って魅惑のポリリズムを聴かせる。

スイスの精密時計とバスク民謡

第3楽章パッサカイユ、トレ・ラルジュ(パッサカリア、モルト・ラルゴ)は4分の3拍子。調号は嬰ヘ短調だが、ピアノの最低音域による冒頭8小節の挽歌風の主題は属音のC♯(嬰ハ)音から始まる。嬰ハ短調の自然短音階ながら第2、6音を欠いた五音音階(ニロ抜き短音階、C♯マイナーペンタトニック)の旋律といえる。実はこれは第2楽章の速いパントゥームの主題を引き延ばして変形させた旋律なのである。

ラヴェル「ピアノ三重奏曲」第3楽章冒頭のパッサカリア主題(部分)

ラヴェル「ピアノ三重奏曲」第3楽章冒頭のパッサカリア主題(部分)

チェロがこの旋律を1オクターブ高い音域で受け継ぐと、ピアノは低音域でA(イ)音を強調し始めるため、嬰ヘ短調の自然短音階の第2,6音を欠いた五音音階(F♯マイナーペンタトニック)風に変わる。嬰ヘ短調と嬰ハ短調の複調的な響きが素朴な民謡風の緩徐楽章に夢幻的で厳かな色彩感を与える。

パッサカイユ(パッサカリア)はバロック期の変奏曲形式の一つであり、バッハやヘンデルの作品でもおなじみだが、起源はスペインにあるようだ。固執低音の主題(バッソ・オスティナート)の上に旋律や和音が折り重なっていく。ピアノの最低音域による単音旋律がパッサカリアの主題であり、中盤で弦とピアノの旋律と和音が折り重なって重厚に盛り上がり、再びピアノの静かで厳かな低音域へと帰っていく。スイス出身の技師の父とスペイン育ちのバスク人の母を持つラヴェル。「スイスの精密時計」のような計算された構成とバスク民謡風の素朴な美しさの両立は、彼の父母から受け継いだ性質によるものか。

洗練された華やかさと大歓声

第4楽章フィナル、アニメ(フィナーレ、アニマート)はイ長調、4分の5拍子と4分の7拍子で、自由なソナタ形式。ヴァイオリンのハーモニックスによるアルペジオ(分散和音)は全曲中でも最難関と思われる。チェロの重音によるトレモロと相まって瑞々しくも輝かしく透明な響きを聴かせる。その弦の上でピアノがイ長調の第1主題を弾き始め、独特のきらびやかな雰囲気を出す。三重奏の洗練された華やかさに感嘆するほかない。

チェロが第2主題を導いた後、ピアノがグリッサンドを鳴らすと同時に、ヴァイオリンとチェロが歓声のような非常に長いトリルを弾き続け、嬰ヘ長調で最初の頂点を築く。2つの主題はその後もうねるように続き、最後のクライマックスへと向かう。弦は熱狂的なトリルで大歓声のように響き渡り、ピアノが最後にイ長調の和音を打ち込み、全奏で全曲を閉じる。第一次世界大戦が始まり、戦場へ向かおうとするラヴェルの心境がうかがわれる異様な幕引きである。

ラヴェルの「ピアノ三重奏曲」は花房や竹澤、横坂ら当代一流のアーティストが挑むだけあって奥が深い。筆者のこの程度の分析では、登山でいえば一合目にも達していない。聴き方は自由だが、音楽評論や音楽ジャーナリズムを標榜するならば、謙虚な姿勢でじっくり作品を探究したい。年100回も200回もコンサートを聴き回る向きもあるようだが、平均的所得の日本人の一般常識からはかけ離れている。それよりも、一つの公演を一音漏らさず真剣に聴きたい。作品と真摯に向き合うことが、作曲家と演奏家へのリスペクトにつながる。

「クラシック名曲 ポップにシン・発見」全編 >

池上輝彦〔いけがみ・てるひこ〕
音楽ライター。日本経済新聞社シニアメディアプロデューサー兼日経広告研究所研究員。早稲田大学商学部卒。証券部・産業部記者を経て欧州総局フランクフルト支局長、文化部編集委員、映像報道部シニア・エディターを歴任。音楽レビュー、映像付き音楽連載記事「ビジュアル音楽堂」などを執筆。クラシック音楽専門誌での批評、CDライナーノーツ、公演プログラムノートの執筆も手掛ける。日経文化事業情報サイト「art NIKKEI」にて「聴きたくなる音楽いい話」を連載中。
日本経済新聞社記者紹介

文/ 池上輝彦

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2026.04.23
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