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Phase67:スクリャービン「プロメテウス」、神秘和音を操る技術、「科学的後期ロマン派」の美学(クラシック名曲 ポップにシン・発見)

Phase67:スクリャービン「プロメテウス」、神秘和音を操る技術、「科学的後期ロマン派」の美学(クラシック名曲 ポップにシン・発見)

19世紀末から20世紀初めのロシアの作曲家アレクサンドル・スクリャービン(1872~1915年)は神秘主義やオカルトに傾倒した印象が強い。彼の作品は神秘だろうか。交響曲第5番「プロメテウス(火の詩)Op.60」(1910年)は、いわゆる神秘和音とその音階を全編に用いる。自然倍音列の音を増・減4度と完全4度の特殊な組み合わせで6個積んだ 和音を軸にした理論的な音楽だ。ギリシャ神話のプロメテウスは知恵の神であり、科学技術の象徴。不協和な響きが渦巻く中、最後に唯一現れる嬰へ長調の和音の発散へと突き進む「科学的後期ロマン派」の美学は感動を呼ぶ。

4度堆積和音が縦横無尽に活躍

「プロメテウス」はピアノとオーケストラによる22分ほどの単一楽章の作品。「交響曲第5番」ではあるが、ピアノ協奏曲風の交響詩ともいえる。オルガンやハープ、鐘、グロッケンシュピール、チェレスタなどのほか、歌詞がない混声四部合唱(ヴォカリース)も入るという大規模な編成の楽曲である。特に異様なのは、スコアの最上段に「Luce(ルーチェ)」と記載された色光ピアノのパートだ。これは弾いて音が鳴る鍵盤楽器ではなく、12音ごとに色を割り振り、根音と和声の変化に応じて演奏会場を異なる色で照らす役割を担う。

「プロメテウス」では全曲を通じて神秘和音が活躍する。人知を超えた難解な和音に思えるが、根音(基音)の上に増4度、減4度、増4度、完全4度、さらに完全4度の順で音を積み上げた一種の4度堆積和音だ。C(ハ)を根音にした場合、構成音は「C、F#、B♭、E、A、D」。これを3度堆積のコードネームで示せば「C13(♯11) omit 5」。Cサーティーンス・シャープ・イレブンから根音の完全5度上のG音(第5音)を抜いた和音と同じだ。「プロメテウス」の冒頭部分はF♯(嬰ヘ)を根音に見立てた「A13(♯11)omit 5」(A、D♯、G、C♯、F♯、B)の展開形と解釈することができる。

C(ハ)を根音にした場合の神秘和音

C(ハ)を根音にした場合の神秘和音

C(ハ)を根音にしたプロメテウス・スケール(音階)

C(ハ)を根音にしたプロメテウス・スケール(音階)

「和声は畳み込まれた旋律」「旋律は拡張された和声」とスクリャービンは捉えた。「プロメテウス」では神秘和音を音階としても使う。「A-B-C♯-D♯-F♯-G」という音階(プロメテウス・スケール)に基づく様々な分散和音や楽句、旋律が、音高やリズムを変えてピアノやオーケストラで縦横無尽に展開される。伝統的な機能和声法では属音(ドミナント)として働く第5音を欠くため、「ドミナント→トニック(Ⅴ→Ⅰ)」という中心的な解決が成されず、調性が曖昧な浮遊感が全編を覆う。無調の現代音楽への扉を開いたといえる作品だ。

「新ルール」に基づき組織化

「プロメテウス」は単に無調的なのではない。独自に考案した神秘和音とその音階を用いて「音の新たな組織化」による秩序の構築を目指す。無秩序な音の放任ではなく、スクリャービンが独自に設定した「新ルール」に基づいて音楽を統制しているのだ。これはシェーンベルクの十二音技法による作曲の考え方を先取りし、マイルス・デイヴィスのモード・ジャズを予見している。3人とも西洋音楽の伝統的な機能和声法から逸脱した新たなルールを発明し、適用することによって、従来にはなかった音楽の自由度と可能性を手に入れた。

スクリャービンのプロメテウス・スケールはシェーンベルクの十二音技法と同様、主音へと向かう「ドミナント→トニック」進行を回避する。しかもマイルス・デイヴィスのモード(旋法)のように、垂直的な和音によるコード進行よりも、スケールや音列に基づく水平的なアプローチを重視した作曲法といえる。「神秘和音」が全編を覆い尽くすとなると、音高を別にすれば和声進行も主音もない。和音の上に旋律が乗るホモフォニー(和声音楽)の仕組みが解体され、ポリフォニー(多声音楽)が全面的に展開されるように思える。

Scriabin: Promethée, le poème du feu, Op. 60

しかし実際には、「プロメテウス」の旋律は、移高する神秘和音の構成音を軸にして作られている。従来の和声進行の秩序ではないにせよ、新たなホモフォニーともいえる両義性を持つ。神秘和音に対応した様々な動機や楽句や旋律が、無重力状態の宇宙空間に明滅する色光のように、生成しては移り過ぎていく。聴き手は果てしない宇宙に投げ出されたような浮遊感を抱き続ける。だがそこには神秘和音に基づく秩序と構成がある。「プロメテウス」の構成や場面転換を聴き手に視覚的にイメージさせる「科学」が色光ピアノだ。

色光ピアノが音を可視化

スクリャービンは音を色として感知する共感覚の持ち主だったという。色光ピアノは、彼の共感覚に基づき、音に応じて特定の色を照射する機能を持つ。スクリャービンと電気技師の友人アレクサンドル・モーゼルが色光ピアノを開発した。「プロメテウス」は1911年3月にモスクワでセルゲイ・クーセヴィツキー指揮のオーケストラと合唱団、スクリャービンのピアノで初演されたが、色光ピアノは技術的問題で用いられなかった(音が出ないので使わなくても音楽的には問題ない)。

改良型の色光ピアノが使用されたのはスクリャービンの死の直前、1915年のニューヨーク公演だった。現在は、電子楽器の演奏データを機器間でデジタル転送するための世界共通規格「MIDI」によるキーボードでプロジェクションマッピングをはじめ各種照明装置を操作する演出が一般的であるようだ。

円グラフのエトキ=スクリャービン「プロメテウス」の調性(根音)と色彩を対照させた五度圏のイメージ

スクリャービン「プロメテウス」の調性(根音)と色彩を対照させた五度圏のイメージ

色光ピアノのパートはト音記号の五線譜に上向きと下向きの2種類の符尾の音符で書かれている。上向きの符尾の音符はその瞬間に流れている和音の中心となる根音の変化に連動して映し出す色を示す。下向きの符尾の音符は非常に長い持続を示す。上向きの符尾の音符で示される移ろいやすい色は、目まぐるしく変化する俗世を表現する。下向きの符尾の音符による持続色は悠久の時の流れ、人類の進化と霊的な深まり、時代精神の変遷を表す。神智学に傾倒したスクリャービンの精神思想が色光に込められている。

一方で色光ピアノは神秘和音に基づく新たな音楽の法則性を可視化する試みでもある。「プロメテウス」の冒頭部分はF♯を根音と見立てた「A13(♯11)omit 5」の和声なので、演奏会場はまずF♯を示す青色で包まれる。次にA(イ)音を示す緑色が照射され、しばらく青と緑が併存するといった具合に色光は変化していく。20世紀初めの当時では、最先端の科学技術を用いた新音楽による総合芸術と受け止められたことだろう。

ロマン主義芸術の旗印

しかし「プロメテウス」は「音楽の科学」ではない。スクリャービンは神秘和音に基づく音楽の新ルールを理論的に創造したが、共感覚や神智学に基づく彼の発想は自然科学とは言い難い。神秘和音はスクリャービンが自然倍音列を音響工学的に研究して発明した和音ではない。彼の神智学の思想や共感覚など主観によって再解釈された和音が神秘和音だ。技術革新が加速した19世紀末から20世紀初頭、英国のH.G.ウェルズらの科学小説が台頭してきた。だがSF小説は自然科学ではない。スクリャービンの「プロメテウス」も「科学的ロマン派音楽(Scientific Romantic Music)」、略してSR音楽と呼んではどうか。

人類に火を与え、主神ゼウスの怒りに触れた神プロメテウスは、近代西洋の芸術家を触発してきた。ゲーテの詩やベートーヴェンのバレエ音楽「プロメテウスの創造物Op.40」から始まり、ヘルダーの戯曲「解き放たれたプロメテウス」に触発されたリストの交響詩「プロメテウス」でロマン主義芸術の旗印となった。プロメテウスはゼウスという専制権力に反抗し、苦難に耐えつつも人間に文明をもたらした英雄なのだ。オスマン帝国の専制に異議を唱え、義勇兵としてギリシャ独立戦争に身を投じて客死した英国のロマン主義詩人バイロン卿の詩「プロメテウス」の掉尾を飾る2行。

Triumphant where it dares defy,
And making Death a Victory.

抗い挑んでは栄誉に浴し、
死を制しては勝利をつかむ。
(筆者拙訳)

熱いスピリチュアル・サイエンス

スクリャービンの「プロメテウス」は神智学や科学を標榜しながらも、火のような情熱をたぎらせている。そこにはリストの交響詩に通じるロマン派音楽の脈動がある。冷たい科学や前衛ではない。同時代のマーラーやリヒャルト・シュトラウスに匹敵する熱量の後期ロマン派音楽でもある。しかもスピリチュアル・サイエンスにロマンを抱く「科学的後期ロマン派音楽」といえる。

曲の終盤では言葉のない混声合唱が凱歌を揚げ、ピアノの旋律は次第に輪郭を浮かび上がらせ、そして最後に嬰へ長調の輝かしい和音が総奏で発散してクライマックスを築く。そのとき演奏会場は鮮やかな青色に染まる。だが嬰へ長調は本当の解決には聴こえず、まだ属和音の段階のような気もする。真の主和音はロ長調か。異様な神秘和音が属和音的に全曲の99%を支配してきたのだから、解き放たれた主和音としての嬰へ長調も新奇に聴こえる。それとも新たな主和音を探し出せということか。プロメテウスから火を得た者は、前へ進もうと決意する。

「クラシック名曲 ポップにシン・発見」全編 >

池上輝彦〔いけがみ・てるひこ〕
音楽ライター。日本経済新聞社シニアメディアプロデューサー兼日経広告研究所研究員。早稲田大学商学部卒。証券部・産業部記者を経て欧州総局フランクフルト支局長、文化部編集委員、映像報道部シニア・エディターを歴任。音楽レビュー、映像付き音楽連載記事「ビジュアル音楽堂」などを執筆。クラシック音楽専門誌での批評、CDライナーノーツ、公演プログラムノートの執筆も手掛ける。日経文化事業情報サイト「art NIKKEI」にて「聴きたくなる音楽いい話」を連載中。
日本経済新聞社記者紹介

文/ 池上輝彦

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2026.03.12
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