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PMFの集大成「PMFオーケストラ東京公演」がサントリーホールで開催

PMFオーケストラ東京公演の様子

『ウエストサイド・ストーリー』の作曲者として知られる世界的音楽家レナード・バーンスタインが1990年、札幌で創設した国際教育音楽祭「パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌(PMF)」。7月7日から26日まで札幌を中心に開催され、その締めくくりとなる「PMFオーケストラ東京公演」が27日、サントリーホールで開かれた。

バーンスタインが遺した世界最高峰の教育音楽祭

PMFは、アメリカのタングルウッド音楽祭、ドイツのシュレスヴィヒ=ホルシュタイン音楽祭と並び、「世界三大教育音楽祭」のひとつに数えられる。その核となるのが、若手音楽家を育成する「PMFアカデミー」だ。
今年は、28か国・地域から18〜29歳までの92人が狭き門を突破。約1か月にわたり、ウィーン・フィルやベルリン・フィル、アメリカの主要オーケストラ首席奏者らによる指導を受けながら、公演やアンサンブルにも出演する。アカデミー生で編成される「PMFオーケストラ」は、ひと夏だけの特別なオーケストラだ。
アメリカ出身のバイオリニスト、正岡万弥さんは幼いころからPMFの存在を知っていたという。
「PMFは夏の教育音楽祭の最高峰だといわれています。アメリカでは決してできない、日本ならではの経験をしたいと思って応募しました」
スロベニアから参加したフルート奏者、ガヤ・バーシッチさんも長年憧れてきた音楽祭だった。
「ウィーン・フィルやベルリン・フィルの方々は一度お会いできるだけでも光栄なのに、一緒に学べるなんて夢にも思いませんでした。初日から、間違いなく特別な機会だと感じたし、オケの初日にリハーサルではその音に心が震えました。期待をはるかに超える経験になりました」
カナダ出身のトロンボーン奏者ジャクソン・ハワードさんは、大学の先輩たちの姿に刺激を受け、参加を決意したという。
「オーケストラは、僕にとって特別な音楽です。世界中から集まった仲間と演奏できるのがPMFの魅力。ここでしか生まれない音があります」

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サントリーホール公演を前にインタビューに応じてくれたPMF2026オーケストラ・アカデミーのメンバー。
左から、正岡万弥さん(バイオリン)、ガヤ・バーシッチさん(フルート)、ジャクソン・ハワードさん(トロンボーン)。

一方、PMFでは地域に根差した音楽活動も大切にしている。札幌で開かれた子ども向けコンサートでは、音楽を楽しむ子どもたちの姿が出演者自身にも大きな刺激を与えた。
「エンジョイしている子どもたちを見て、自分も昔はあちら側にいたんだなと思いました。あのころから、自分もがんばったんだなという気持ちになりました」(万弥さん)
約1か月という短期間ながら、その学びは演奏技術だけにとどまらない。
「技術はもちろんですが、日本文化に触れ、世界中の仲間と刺激し合うなかで、自分自身のアイデンティティも磨かれたように感じます」(万弥さん)
ガヤさんとジャクソンさんがともに感じているのは、「それぞれの本質を維持した上での成長」だ。
「それぞれスタイルに違いがあり、それでいいことを学びました。重要なのは、みんなが特別な音楽をつくりたいと思っていることです」(ジャクソンさん)
そして、いよいよ参加者にとっての最後の共演──。ガヤさんは、こう笑顔を見せた。
「終わってほしくないという気持ちです。一方で、サントリーホールの楽屋に連なる名立たるオーケストラや音楽家の名前を見て、彼らと同じ舞台に立つことは信じられない!と興奮もしています。120パーセント楽しみたいと思っています」
それぞれが、ビタースイートな感情を抱き、大舞台へと向かった。

世界へ羽ばたくひと夏のオーケストラ

観客でほぼ埋め尽くされたサントリーホール。指揮を執るのは今年PMFに初参加したアメリカの名匠デイヴィッド・ロバートソンだ。今回はストラヴィンスキー、ベートーヴェン、プロコフィエフという20世紀音楽と古典を組み合わせたプログラムで、若き音楽家たちを導いた。
幕開けはストラヴィンスキー『管楽器のためのシンフォニーズ』。短い音楽がつなぎ合わされて木管楽器と金管楽器が次々と入れ替わり、独特の不規則なリズムが展開していく。約9分と短い演奏時間で、アカデミー生たちは冒頭から観客を惹きつけた。

PMFオーケストラ

続くベートーヴェン『バイオリン協奏曲ニ長調』では、注目の若手バイオリニスト吉本梨乃がソリストとして登場。気品と力強さを兼ね備えた吉本の演奏と、みずみずしく熱のこもったオーケストラの対話は圧巻。熱狂的なフィナーレを迎えて曲が閉じると、「ブラボー!」の声が。鳴りやまない拍手に応え、吉本はアンコールとしてパガニーニ『ヴェニスの謝肉祭』を披露した。

バイオリニスト吉本梨乃

この日のメインプログラムは、プロコフィエフ『交響曲第5番 変ロ長調』。壮大な第1楽章、細かいリズムに始まり、最後は猛スピードで駆け抜ける第2楽章、ドラマチックな第3楽章を経て、終楽章ではオーケストラ全体が圧倒的なエネルギーを放つ。ひと夏をともに過ごしたアカデミー生たちの思いが凝縮されたような熱演に、観客は万雷の拍手を送った。
国籍も文化、言語も異なる若者たちが、わずか1か月でひとつの音楽をつくり上げる。その過程こそがPMFの真価なのだろう。
終演後には、ステージ上でハグし合うアカデミー生たちの姿が印象的だった。
インタビューでは、ジャクソンさんはこんな話をしてくれた。
「教授とみんなで食事に行ったことがあります。音楽のこと、人生のことを話していたら、気づけば6時間が過ぎていました。この絆は一生続くと思います。今後、プロとしてみんなが活動していくなかで、再会があるに違いありません」PMFオーケストラ東京公演の様子

PMFはこれまで、約30年間で79か国・地域、のべ約3,900人の音楽家を世界へ送り出してきた。今年の92人もかけがえのない経験を胸に、それぞれ目指す場所へと巣立っていく。
万弥さんは「自分の音楽をどうすればもっと人に届けられるかを追求したい」と語り、ジャクソンさんは「心で聴く音楽を届けられる演奏家になりたい」と未来を見据える。ガヤさんも「音楽家としてだけでなく、一人の人間として成長し、少しでも世界に良いものを残したい」と話した。
バーンスタインがPMFに託したのは、優れた演奏家を育てることだけではない。音楽を通して人と人がつながり、その経験を世界へ持ち帰ることだった。その願いは今年もまた、一人ひとりの若き音楽家へと受け継がれ、新たな未来へと続いていく。PMFオーケストラ東京公演の様子

■テレビ放送のお知らせ

2026年7月26日(日)に開催された「PMF GALAコンサート」(指揮:デイヴィッド・ロバートソン)の模様がテレビで放送されます。
放送日時:2026年9月20日(日)午後9:00
番組名:NHK Eテレ『クラシック音楽館』
詳細はこちら

■パシフィック・ミュージック・フェスティバル札幌

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PMF オフィシャルサイト

文/ 福田素子
写真提供/ PMF組織委員会

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2026.08.28
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