
ヤマハが展開するプロジェクト「LovePiano」と、バーチャルシンガー・初音ミクがコラボし、「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」が誕生した。そのデザインのコンセプトや誕生秘話を、ヤマハの山下有美子さんと野藤義一さんに聞いた。
デザインに秘められたストーリー
世界中に多くのファンをもつ「初音ミク」が2027年に誕生20周年を迎える。一方、空港や商業施設など200か所以上に展示され、日本のストリートピアノ文化を根付かせてきたLovePianoは、2027年に10周年を迎える。これを一緒にお祝いし盛り上げようと、初音ミクを開発したクリプトン・フューチャー・メディア株式会社(以下、クリプトン社)とヤマハとの協働プロジェクトが始動。それぞれのコンセプトを融合し、生まれたのが「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」だ。
デザインのディレクションを担当した野藤義一さんは、「初音ミク20周年とLovePiano10周年の記念モデルとして、それぞれの文化が交わるような形にできればと考えました」と語る。実際のデザインはクリプトン社が担当。野藤さんは全体的なデザインの方向性やコンセプトを調整する役割を担った。
「LovePianoでのお客さんの反応などをお伝えして、入れた方がいい要素などをアドバイスさせていただきました」(野藤さん)

一瞬で心を奪われる色調やデザインの「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」。まず目を引くのは、ピアノ右の側板に描かれたミクの全身像。ヤマハが1983年に発売した歴史的名機、デジタルシンセサイザー「DXシリーズ」がオマージュされた「VOCALOID2 初音ミク」だ。ミクの髪色であるDXグリーンはDXシリーズのスイッチに使われた象徴的なカラー。それを基調色として、ミクのツインテールを束ねるリボンの鮮やかなピンクと黒がとてもクールな雰囲気を漂わせている。
ミクの袖に描かれているDXシリーズのパネルは、鍵盤横の腕木に再現。また、演奏者の視界に入る譜面台の斜め上にはミクのシルエットも。初音ミクとLovePiano、両者のテイストや象徴的な要素が散りばめられた、スタイリッシュなデザインが完成した。


「楽器にキャラクターを描くにあたっては、2021年に電子ピアノの“プロジェクトセカイ・ピアノ”でクリプトンさんとコラボレーションした経験を生かすことができました。DXシリーズをモチーフに生まれたキャラクターが、LovePianoにデザインされる。そんなヤマハの歴史を感じてもらえるデザインになったと思います。ミクさんがアコースティックピアノとコラボレーションするのは初めて、というところも注目ポイントですね」(野藤さん)

デジタルシンセサイザー「DX7」
デザイン完成までは何度かの意見交換があった。クリプトン社からの最初の提案は、基調色のグリーンを全体的に塗り、ミクを象徴するアイテムを散りばめるデザインだったという。
「細かくいろいろな仕掛けを入れるのがLovePianoのテイストです。それはもともと、遠くから見て気になり、近づくほど細かな仕掛けや絵柄に気づいてもらえるように、という思いから生まれたものでした。ですから歴代のLovePianoと並べても違和感のないデザインにしたいと思いました。その上で、地模様をわりと細かく入れていただいたり、近づいた時に見えるピアノの足元にもピンクと黒を配してもらうなどのお願いをしました」
そう語るのは、LovePianoプロジェクトの立ち上げ当初から関わり、「LovePianoの母」とも呼ばれているヤマハの山下有美子さん。
「DXシリーズのパネルが腕木に描かれていたり、鍵盤蓋をしめた時に黒が際立ってピアノ感が増したりと、見る場所や角度によっても印象が変わります。ぜひ、実際に見て弾いて、そして写真を撮って、楽しんでいただければと思います」
歴代の「LovePiano」
ふたつの文化の架け橋に
ボーカロイド文化とストリートピアノ文化、つまり打ち込みの音楽とリアルな演奏という、異なる文化が重なるきっかけになるとしたら嬉しい、と語る山下さん。
「この子(ピアノ)がこれからどんな人生を歩むのか見守りたい、そんな母親のような思いがあります。2022年にホテルグループとのつながりから生まれた『旅するLovePiano』のように、これまでもLovePianoがいろいろなご縁を持ってきてくれました。ですから、今回のミクさんのピアノも、きっと新しい出会いをつなげてくれるのでは、と思っています。そこからさらにストリートピアノ界が盛り上がっていったら嬉しいですね」
ところで、野藤さんと山下さんを驚かせたのが海外からの反響の大きさだ。「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」の情報をリリースした直後、国内はもちろん海外メディアやインフルエンサーが敏感に反応したという。
「これを機に、初音ミクとヤマハのコラボレーションの取り組みが、グローバルにさらに広がっていくといいなと期待しています」(野藤さん)
「このピアノと一緒にLovePianoの活動を紹介してくれたメディアもあって新鮮でした。ミクさんの力ってすごいですね」(山下さん)
バーチャルシンガーたちの3DCGライブと創作の楽しさを体感するイベント『初音ミク「マジカルミライ 2026」』での展示は7月にHAMAMATSUで行われ、8月はOSAKA、TOKYOでも行われる。その後は10月から一般貸し出しが始まり、各地での展示が開始する(展示に関する問合せの受付は9月1日から)。LovePianoの公式サイトでぜひ展示予定をチェックしてこのピアノに会いに行ってほしい。
ふたつの文化から新たに生まれた「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」が、これからどんなストーリーを紡いでいくのだろう。その未来を想像するだけでワクワクする。
■初音ミク「マジカルミライ 2026」
●HAMAMATSU
開催日:2026年7月24日(金)~26日(日)
会場:アクトシティ浜松 展示イベントホール(静岡県浜松市中央区中央3-12-1)
※開催終了
●OSAKA
開催日:2026年8月14日(金)~16日(日)
会場:インテックス大阪 3号館(大阪府大阪市住之江区南港北1-5-102)
※開催終了
●TOKYO
開催日:2026年8月28日(金)~30日(日)
会場:幕張メッセ 国際展示場 1・2・3ホール(千葉県千葉市美浜区中瀬2-1)
※OSAKA会場、TOKYO会場は、自由に演奏をお楽しみいただけます。ただし、主催者のイベントなどにより一時的に演奏できない場合があります。
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■「LovePiano feat. HATSUNE MIKU」
ストリートピアノとして2026年10月から各地で展示されます。
受付:2026年9月1日開始
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■『初音ミク』とは
クリプトン・フューチャー・メディア株式会社が開発した、歌詞とメロディーを入力して誰でも歌を歌わせることができる「ソフトウェア」。大勢のクリエイターが「初音ミク」で音楽を作り、インターネット上に投稿したことで一躍ムーブメントとなった。「キャラクター」としても注目を集め、今ではバーチャルシンガーとしてグッズ展開やライブを行うなど多方面で活躍するようになり、人気は世界に拡がっている。
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