
エレクトーン「STAGEA」が、12年ぶりにリニューアル。ルックスも機能も演奏性も大きく前進し、演奏者の表現への欲求にどこまでも応えるモデルとなった。
進化しても“ステージ上で奏者が輝く”というコンセプトは変わらない
ヤマハが開発した電子オルガンであるエレクトーンは、1959年の誕生から現在まで多くの音楽家に愛され、また音楽教育の現場でも存在感を放ち続けている。ピアノと並び、まさにヤマハを象徴する楽器のひとつといっても過言ではない。
そんなエレクトーンにとって、大きな転機となったのは2004年。インターネットの発達に代表されるデジタル化に対応しながら、リアルタイムで演奏することの楽しさを追求した「STAGEA」が登場したのだ。「エレクトーンはひとりでオーケストラのサウンドが出せるだけではなく、さまざまなジャンルの曲が弾ける楽しい楽器です。その魅力をひとりでも多くの方に知ってほしい、そして奏者がステージの上で輝いてほしい、という願いが『STAGEA』には込められています」
こう語るのは、ヤマハの鳥村浩之さん。エレクトーンをはじめ、電子楽器の開発に長年携わっている。
「『STAGEA』は2014年にモデルチェンジを行い、このたび登場した『ELS-03シリーズ』が3代目となりますが、製品に込めた思いは変わりません」

モデルプロデュースを担当した鳥村浩之さん(上左)、音響を担当した沼野俊亮さん(上右)、鍵盤の開発を行った吉崎悠さん(下左)、デザインを手がけた風当将文さん(下右)。
もっと多くの人に知ってもらい、“弾きたい”と思ってもらえる楽器づくり。
「ELS-03シリーズ」は、前モデルの登場以来、12年の間にヤマハが蓄積してきた電子楽器に関わる技術の中からエレクトーンらしさを高められるものをピックアップし、応用させながら開発を進めたという。
「目標とする楽器像として“従来の枠を超えたい”という気持ちがありました」と鳥村さん。代表的なものが、上鍵盤の左側に配置された9つのスライダーだ。これを用いて、各ボイスセクションの音量や明るさをリアルタイムで調節できるようになった。オルガンサウンドを使用する場合はドローバーの役目も果たす。好みで調整したい機能を割り当てることもできる。これによって、サウンドにこれまでにない表情がつけられるようになり、より自由な表現が可能になったのである。
「もちろん、これまでも鍵盤とエクスプレッションペダルだけでさまざまな表現ができる楽器としてエレクトーンの開発を続けてきました。『ELS-03シリーズ』もその部分はかなり強化しています。加えて、今回は“鍵盤から手を離して操作してもいいのではないか”という、文字どおり“従来の枠を超えた”発想を盛り込むことで奏者の選択肢を広げ、演奏の可能性も大きく広げることができたと思っています」
エクスプレッションペダル、フットスイッチ、そしてスライダーを使ってリアルタイムでさまざまなパラメーター(音色や演奏などの設定)を操作できる機能は「ライブエクスプレッションコントロール」と呼ばれている。
レガシーを振り返って生まれたデザイン
「奏でよう、あなたの色で。」
これが「ELS-03シリーズ」のキャッチコピーだ。コンセプトを鳥村さんに訊ねると「このコピーがすべてを表しているような気がします」と返ってきた。前出のスライダーとともに、ひと目見て“変わった”と思えるのが、黒と白を大胆に使って統一されたモノトーンのカラーリング。音楽に彩りを添えるのはあなたですよ、といわんばかりだ。ここでデザインを担当した風当将文さんに聞いてみよう。
「音楽教室、自宅、そしてステージ。エレクトーンが演奏される主なシーンはこの3つで、従来はどれも同じぐらいの配分で考えていました。しかし今回は、特にステージ上での見栄えを大事にしたい、プロが使っている姿を見た人が憧れるような楽器にしたいと考え、それをデザインのテーマとしました」
加えて“古くならないデザインを”という視点も大事にしたという。そこで風当さんは65年以上にわたるエレクトーンの歴史を改めて見つめ直し、そのレガシーからデザインのヒントを探っていった。
そうして導き出されたのが、1970年代をリードした「EX-42」や「GX-1」に代表される、白い筐体に黒いコントロールパネルというコンビネーションだった。
「これらの機種は50年以上前のものですが、今でも古さを全く感じませんし、中に新しいテクノロジーが詰まっている印象があります。それでこのデザインのイメージを踏襲することに決めました」
ボディは、大きな面をスパッと切ったような、インパクトがありつつすっきりとした形状にして、実際に物体を手づくりしてボディや鍵盤を目の前にしたときの迫力や重厚感、強度、バランスなどを子細に検証しながら作り込んでいったという。
「ボタンの形状も当時の機種を参考にして、迫力あるボディと対照的な、お菓子のような光沢感のあるレバーから着想を得たルックスも踏襲しました。表面を反り返らせた形状は、ミスタッチを防ぐ効果もあります」
ボタンの配置は横に流れていくような動きを意識し、その両端にはスピーカーが独立して配置されている。このスピーカーも、実は「STAGEA」の歴史において転換点となる大きなポイントだった。

「ELS-03シリーズ」
歴史を変えるスピーカーと鍵盤
「それまでの機種では足元のスピーカーボックスに集約されたスピーカーをメインで使用していたのですが、『ELS-03シリーズ』ではボディの下部にウーファー、上部にスコーカーとツイーターというように各々のスピーカー位置を適度に分散させています。これによって楽器全体が鳴っているような音場を体験できるようになりました」
こう語るのは、音響を担当した沼野俊亮さん。「ELS-03シリーズ」では、すべてのラインアップにおいて、それぞれのモデルに最適な音響設計を施したという。
「楽器の前に座ってもらうと、音の広がり、そして音の厚みの違いを肌で感じていただけると思います」
もうひとつ、「ELS-03シリーズ」の大きな特徴はアフタータッチが進化したこと。特に上位機種の「クラスX」に搭載され、ビブラートをはじめよりリアルで繊細な表現を可能にした「ポリアフタータッチ」は、エレクトーンに初めて搭載された新機能である。鍵盤の開発を担当した吉崎悠さんに話を聞く。
「1鍵ごとに圧力を検知するセンサーを搭載した新開発のFSX-i鍵盤によって、指の繊細な動きを捉え、演奏者の感性がよりダイレクトに反映されるようになりました」
ポリアフタータッチは、すでにシンセサイザーで実現している技術だが、FSX-i鍵盤はシンセサイザーに使用した鍵盤とは全く異なる構造の鍵盤である。エレクトーンの奏法に適したポリアフタータッチを開発することに加え、この鍵盤をボディに搭載するのが予想以上に大変だったという。
「演奏の安定感を保ったまま、この鍵盤を取り付けるのに苦労しました。ボディの剛性の確保やセンサーの補正の実装、ポリアフタータッチの効果のかかり方の調整等、本体の設計チームと密接に連携することで実現にこぎつけました」
12年分の進化を実証するように、革新的な機能を盛り込んだ「ELS-03シリーズ」。その使い方は“お客様に委ねたい”と鳥村さんは語る。
「お客様が自分らしい音楽を作るために、創造性を発揮するための機能をどのように使うのか。使いながら工夫していただけたらうれしいです」
その参考となるのが、ユーチューブで公開され、SNSでも話題となった「ELS-03シリーズ」のパフォーマンス動画「#ワンレジチャレンジ」だ。奏者の感性と創造力が無限に引き出されたこの動画を観て興味を持ったら、ぜひ店頭で実際に「ELS-03シリーズ」を試してみてほしい。
ELS-03 Series 紹介動画
■エレクトーン「ELS-03シリーズ」
目的や演奏スタイルに合わせて選べる4つのラインアップ
ELS-03X
FSX-i鍵盤など、「クラスX」のすべての機能を搭載。本体とスタンドを取り外して運搬が可能。
ELS-03XR
FSX-i鍵盤など、「クラスX」のすべての機能を搭載。本体とスタンドが一体構造でより安定した演奏が可能。
ELS-03G
「ELS-03シリーズ」の主要機能を搭載したスタンダードモデル。本体とスタンドを取り外して運搬が可能。
ELS-03XF
FSX-i鍵盤など、「クラスX」のすべての機能を搭載。フルスケールのペダル鍵盤を搭載し、プロフェッショナルな表現力と操作性を追求した最上位モデル。
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