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今月の音遊人:佐藤竹善さん「僕にとって音や音楽は、酸素と同じような存在です」

今月の音遊人:佐藤竹善さん「僕にとって音や音楽は、酸素と同じような存在なんです」

SING LIKE TALKINGとして、ソロとして、多彩なアーティストとのコンサートやレコーディングへの参加、楽曲提供やプロデュースなどを行っている佐藤竹善さん。いまだからこそわかる音楽への思いを率直に語っていただきました。

Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?

中学1年生のときに、おじさんの家でザ・ビートルズの赤(『ザ・ビートルズ 1962年〜1966年』)と青(『ザ・ビートルズ 1967年〜1970年』)のカセットを見つけて。ビートルズという名前は小学5年生のときにコピーバンドに誘われたことがあったので知っていたんですが、僕は小学6年生まで演歌にしか興味がなかったので断ったんです。
“これがザ・ビートルズか”と思って、そのカセットを借りて聴いてみたら、非常に衝撃を受けました。それまで歌というのは歌番組の歌謡曲くらいしか聴いたことがなかったし、当時の歌番組のバンドは山本直純さんなどが指揮をされて、弦もいてホーンもいてという大きなバンドだったので、歌の伴奏はそのスタイルだと思っていたんです。でも赤の1曲目『ラヴ・ミー・ドゥ』を聴いた瞬間、ギターとベースとドラムとハーモニカというシンプルな編成なのに、すごい音圧とパワーを感じて、それが衝撃的でした。80人のオーケストラに負けないくらいのパワーが、アンサンブルや編曲、レコーディングの仕方次第で出せる――当時は言葉にできない衝撃でしたけど、いろんな知識や経験を重ねてきたいまのほうが、その衝撃をより強く感じているかもしれません。
もちろんメロディのよさやデュオのヴォーカルも衝撃的でしたので、一日何度も聴き返していました。それこそアルバムの全曲曲順どおりに、聴こえるままに覚えた歌詞で歌えたくらい聴き込みましたね。

Q2.佐藤さんにとって「音」や「音楽」とは?

酸素です。意識せずに気づいたら吸っている感じ。僕にとって音や音楽も、それと同じような存在です。
気づいたら、音楽も、音楽じゃない日常で鳴っているいろんな音も、自然と耳に入ってきて、そこに対して何かしらの感覚や感想を無意識に持っている。意識して聴こうとしているわけじゃないのに、いつもそばにある。そんな“当たり前”の存在です。
僕は無音が苦手で、寝るときもラジオをつけていないと寝られないし、何かしら音が鳴っていることで安心できる。だから「音は酸素みたい」と言うと、ちょっとカッコつけて聞こえるかもしれないけれど、実際はもっと素朴な感覚で、ただそこにあってほしいものなんです。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?

ジャズ・ミュージシャンです。ジャズというもの自体が音で遊ぶ行為だと思っています。もちろんジャズにも、クラシックやポップスと同じようにしっかり構成を考えて作り上げることはあります。でも、いざライブで表現するとき、またはアンサンブルを組み立てるとき、その最中の発想の根底にあるのは”音で遊ぶ”という姿勢かなと。ライブにおいては、ほかのジャンル以上に“遊ぶ”ことがジャズの命になっていると思います。
だからジャズの世界では“音を間違う”って概念がないといいます。マイルス・デイヴィスが、“間違った音を出しても、次にどんな音を出すかで、間違っているか間違っていないかが決まる”というような言葉を残していますけど、これはもう本当に音で遊ぶ人たち、本気で遊べる人たちならではの考えですよね。
そういう意味で、音で遊ぶジャズのスピリットというのは、ポップスをやっている人間としてとても参考にしています。塩谷哲とやっているSALT & SUGARも“音で遊ぶ”ためのユニットです。カバーを演奏するときも、原曲通りに歌ったり弾いたりする場合でも、そのときの気持ち次第で声の出し方やピアノの弾き方も変わるし、完全にアドリブでやってしまうこともあります。

Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?

よくも悪くも、自分の“素”がそのまま形になって現れるところですね。
自分の既成概念を壊していかないとクリエイティブにはなれないと思っているんですが、人間なので、そのときの年齢だったり状況なりで変に偏ったり、頑なになったりすることって、どうしてもあるじゃないですか。音楽という仕事を選んで40年近く表現していると、その偏りや頑なさもパフォーマンスや音楽、演奏に出るというか、いままでの作品を聴いたり、ライブを観たりすると感じられるんです。
それを目の当たりにすることで“ここはよくなかったな”とか、“こういうふうにできればもっといい曲を書けるかもしれない”と気づける。結果それが、自分の音楽や自分自身をもっとよくしていくことに繋がるのではないかなと。
“俺の人生はここまで”とか、“60歳も過ぎたし、これが俺の味だ”と思うようになったら、たぶん音楽は辞めたほうがいいんだろうな――そういうふうに“まだ変われる”“もっと良くなれる”という感覚をいまでも持てていること自体が、音楽を続けてきてよかったことのひとつだと思っています。

 

佐藤竹善〔さとう・ちくぜん〕
青森県出身。SING LIKE TALKINGのボーカルとして1988年にデビュー。1994年からソロ活動を並行し、オリジナルを含む、数々の作品をリリース。2025年からは自身の音楽のグローバル展開を主軸にした別名義プロジェクト『Joppa Leigh』を新たに始動。そして2026年には、ピアニスト塩谷哲とのユニットSALT & SUGARがデビュー30周年を迎えた。3月からはクラブサーキットとしてビルボードライブを中心に周り、7月からは同ユニット17年ぶりのホールツアーを開始し、新曲も準備中。精力的に活動を行っている。
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文/ 飯島健一
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2026.05.01
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