
敷居は低く、理想は高く
名古屋市中川区で活動を続けるシュブロー・ウインドオーケストラは、地域に密着している矢木楽器店を母体として2016年に結成された社会人吹奏楽団だ。「敷居は低く、理想は高く」「楽しく気軽に」というモットーと、「楽器はひとりで演奏するだけではなく、誰かと一緒に演奏することでも深く味わうことができる」という矢木楽器店の代表の想いを体現するように、楽器店に併設する音楽教室に通う生徒や、吹奏楽に興味のある地域の愛好者が集い、活動がスタートした。当時、楽団の立ち上げを担当した同楽器店の藤井一寿さんは「レベルなど関係なく、誰もが吹奏楽を楽しめる楽団にしたいと考えました」と振り返る。

インタビューにご協力いただいたメンバー。
前列左から、竹嶌さん、忠鉢さん、三輪さん、前田さん、後列左から、藤井さん、浅野さん、大島さん、水野さん。
当初は吹奏楽の経験者が少なく、初期から在籍している竹嶌裕子さん(サックス)は「最初は一曲を通して演奏することすら大変な状況。ようやく通すことができたとき、みんなで喜んだのを覚えています」と回想する。同じく初期メンバーの三輪亜凜さん(トロンボーン)も「徐々に演奏できる作品が増えてきて、定番曲やレベルの高い曲も演奏できるようになり、この10年ほどでぐんと成長したと思います」と楽団の変化を語る。
成長のキーとなったのが、結成から間もなくバンドディレクターに就任した水野彰さんの存在だ。副団長の大島弘庄さん(トランペット)は、トロンボーン奏者でもある水野さんの指導について「厳しさが求められることもある吹奏楽団にあって、楽しさを大切にしてくれる。水野先生の魅力はそこにあると思います」と語る。こうした方針によって、楽団内では熱い向上心と程よい“ゆるさ”が絶妙なバランスで両立されているようだ。
「ミスをしても、それに対して周囲のメンバーがとがめることはない。そもそもうちの楽団は合奏練習前にチューニングをすることも多くはなく、おおらかな雰囲気があります。ただし、その一方で向上心もあり、その部分は水野先生にうまくフォローしていただいています」(大島さん)
水野さんは「楽しむことこそ、吹奏楽の醍醐味。この楽団が引き継いできた空気感を大切に、音楽の楽しみを伝えられるような指導を心がけています」と力を込める。

この日は翌日のクリスマスコンサートに向けて、曲順どおりに合奏練習。和やかな雰囲気の中、徐々に集中力が高まり、演奏に一体感が生まれていった。
居場所をなくしたくない
そんなシュブロー・ウインドオーケストラは、2025年1月、ある大きな転機を経験した。結成から10年目となる節目に、母体であった矢木楽器店から独立し、自主運営で活動を行うことになったのだ。
独立するにあたって、もちろん楽団内でも葛藤は生じたという。これまでと同じように運営することはできるのかなど、さまざまな不安もあった。団長の浅野彰大さん(バリトンサックス・バスクラリネット)は「メンバーもたくさん減るだろうなと覚悟しました」と吐露するが、その心配は杞憂に終わった。
「独立が決まったとき、メンバー同士の議論の中で『解散するかどうか』という問いが生じた瞬間もありましたが、ほとんどのメンバーが『自分たちで運営することになっても続けたい』と答えました。そんな大切な場所を残し続けていくためにも、一人ひとりで協力し合おうという姿勢が自然と生まれました」(浅野さん)
そして、それまで矢木楽器店の藤井さんが担っていた練習場所の準備や楽譜の用意、SNSでの発信、公演のセッティングなどの業務をメンバーが分担して行うことに。それに伴い、メンバー一人ひとりの参加意欲と積極性が高まり、それが楽団活動のモチベーション向上にもつながっているという。
毎週土曜日には、独立前と同じように矢木楽器店に併設されているホールで練習を実施。「これまでと変わらず毎週集まれていることこそが、うまくいっている証拠」と浅野さん。事実、演奏会もこれまでと同じペースで開催できている。
楽団の過渡期であった2024年に加入した忠鉢珠未さん(パーカッション)は、入団を決めた理由のひとつとして「アットホームな雰囲気だったから」と話す。その言葉どおり、取材時に見学した練習の様子はとても和やかだった。団長の浅野さんは「運営体制が変わってもここまで続けられたのは、メンバーそれぞれにとってシュブローは居心地がよく、楽しさを感じられる居場所だったから。演奏技術の向上を目指しつつ、演奏する楽しさを感じられる楽団として、これからも続けていきたいと思います」と未来を見据える。

クリスマスコンサートは満員御礼。定番のクリスマスソングや子ども向けの楽曲を披露し、地域の子どもたちをはじめ、観客の一人ひとりに吹奏楽や楽器演奏の楽しさを届けた。
シュブロー・ウインドオーケストラのQ&A
Q.楽団名の由来は?
「シュブロー」はフランス語で「子山羊」を意味します。母体である矢木楽器店の「矢木(やぎ)」と「山羊(やぎ)」をかけており、また「子山羊からどんどん成長していけますように」という願いも込めています。
Q.この楽団で活動する魅力は?
音楽や演奏の経験値を問わず、みんなで助け合いながら活動できるところです。演奏する楽しさが優先されているため、楽団全体の雰囲気が和やかです。一方で、練習を重ねるごとに成長していく実感も得られるため、前向きな想いで音楽に取り組むことができる環境が整っています。
楽団紹介
●楽団名:シュブロー・ウインドオーケストラ
●結成時期:2016年
●活動内容:定期演奏会をはじめ、スプリングコンサートやクリスマスコンサートなど年3~4回の演奏会を開催。
●練習頻度:通常練習は毎週土曜日16:30~20:00(16:30~18:00個人練習/18:00~20:00合奏練習)
●平均年齢:40歳
●メンバー:約30名
オフィシャルサイト
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photo/ 村川荘兵衛
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