
クラシックギタリストとして活躍しつつ、クラシックギターでロックを演奏するスタイルでも注目を集める猪居亜美さん。幼少期からクラシックに親しみ、中学生でエレキギターを手にしてロックに傾倒するなど、ジャンルを超えた音楽歴を経て現在に至るという。そんな彼女のルーツ、そして音楽に対する気持ちなどを聞きました。
Q1.これまでの人生の中で一番多く聴いた曲は何ですか?
ロックでは、ビジュアル系バンドMUCCの『アゲハ』をよく聴いていました。小学生のときにライブ映像をテレビで観て、“日本にこんなバンドがいるんだ”と衝撃を受けてMUCCにはまり、ロックの世界にはまっていったんです。MUCCは常に音楽性を変化させてバンドとして進化している、その姿勢にすごく影響を受けていて。彼らがいなかったら音楽を続けていなかったかもしれません。
プロになってから衝撃を受けたのがLOUDNESSで、一番聴いているアルバムは『HURRICANE EYES』。1987年発表ですけど、いま聴いてもテクニカルだしすごい音楽性だなと思います。
クラシックだとテクニック系が好きなので、パガニーニの曲ですね。ロックギタリストのイングヴェイ・マルムスティーンもパガニーニの影響を受けているところに共感しています。すこし話がそれますが、彼は1998年に『エレクトリック・ギターとオーケストラのための協奏組曲 変ホ短調「新世紀」』というコンチェルトを発表していて、ロックギタリストがあそこまで本格的なコンチェルトを書き上げたのが素晴らしいなと思います。
ほかには、アルベルト・ヒナステラの『ギター・ソナタ Op.47』を好んで聴いていて、そこから現代音楽にはまっていきました。現代音楽って、一回聴いただけでは“これはなんだ?”ってなることが多いんですけど、何度か聴いていくうちに、きれいなメロディが聴こえてきたり、“ここにこんなモチーフが隠れていたんだ”といった発見があったりするんです。そんな過程が楽しくなっていくのが現代曲の魅力だと思いますね。
Q2.猪居さんにとって「音」や「音楽」とは?
物心ついたときには音楽を聴くことも、ギターを弾くのも当たり前だったので、音楽がない人生は想像できないです。仮にクラシックギタリストになれていなくても、音楽に関わる仕事はしていたと思う。それくらい音楽以外の選択肢がない人生だったんです。
普段の生活でも音楽を聴いてない時間はほとんどないですね。心地よくなりたくて聴くこともあれば、勉強のために聴いたり、“次はどんなロックの曲をクラシックギターで弾こう”と曲探しで聴いたりすることもありますし、プライベートも仕事も音楽中心に回っています。
だから音楽がこの世になかったら、どうやって生きているかわからない。あらゆる思考が停止する気がします。

Q3.「音で遊ぶ人」と聞いてどんな人を想像しますか?
アドリブとかセッションできる人がそうなのかなと思っています。クラシックは楽譜をいかに分析して説得力のある演奏ができるか、それだけの技量があるかというところで勝負をしているので、アドリブやセッションのようにいきなりみんなで音を鳴らし始め、融合し、作品にしていくっていうのは真逆のことなんです。
ただ、クラシックでもフォルテと指示されているところをピアニッシモで弾いてみるとか、あえて楽譜に書かれていることとは違う弾き方をしてみることはあります。楽譜に忠実であることは大前提で、そのなかでどこまで攻めることができるか、そういった部分ではクラシックでも音で遊ぶことはできるのかなと思いますね。
Q4.楽器や音楽をやっていてよかったことは何ですか?
音楽は世界共通言語、どの国の方ともつながれるのが魅力ですね。SNSで演奏動画をアップしていると、いろんな国の方からコメントがくるんです。何語か分からないし、翻訳してもうまく理解できないこともあるんですけど、音楽ではちゃんと通じ合っている。そういうつながり方は音楽でなければできないと思います。
クラシックギターをやっていて良かったのは、憧れのロックギタリストであるMUCCのミヤさんやLOUDNESSの高崎晃さんにお会いして、「あなたの音楽に影響を受けました。救われてきました」とお伝えできたことです。私がクラシックギターでロックを演奏しているから、私に対して興味を持ってくださり、対談もさせていただけたと思うので。だからクラシックギターを相棒に選んで良かったなと思いますね。

猪居亜美〔いのい・あみ〕
4歳より父、猪居信之に師事しギターを始める。6歳より勝間恵子氏にピアノ、ソルフェージュを師事。2012年より大阪音楽大学にて藤井敬吾、福田進一、両氏に師事。2016年大阪音楽大学を首席で卒業。現在は岩崎慎一氏、益田展行氏にも師事し、自身も後進の指導にあたっている。
アルバムは『Black Star』(2015年)、『Moonlight』(2017年)、『MEDUSA』(2019年)のいずれもレコード芸術特選盤に選出されている。2026年2月に“クラシック”アルバム『BLACK ROSE』と“ロックカバー”アルバム『RED ROSE』を発売。
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