
若手クラシック演奏者の登竜門である東京オペラシティ主催のコンサート“B→C”の2025年公演への出演を果たす一方で、ヘヴィメタルやハードロックをカバーした動画をSNSで積極的に発信するなど、ジャンルの壁を超えた活動で国内外の注目を集めるクラシックギタリストの猪居亜美さん。2026年2月にクラシック作品集の『BLACK ROSE』とロックカバー集『RED ROSE』の2枚を同時発売。異なるジャンルを自由に行き来する彼女の音楽性に迫る。
ナイロン弦で弾く、ロックなひずみの音
猪居さんは幼少期からクラシックギター奏者の父・猪居信之の指導を受けた。
「私は4歳から父の指導でクラシックギターを始めたんですが、中学生でビジュアル系を知ってからロックにはまり、エレキギターを手にしたこともあって。残念ながらエレキは挫折しましたけど、小さい頃からやっているクラシックギターならメタルやハードロックの曲も弾けるかもと思い、挑戦するようになったんです」
そんな彼女が親に反対されながらも聴いていたというロックへの愛情が詰まった『RED ROSE』を聴くと、トレモロやラスゲアードといったクラシックギターならではの手法を用いながら、ロック特有のスピード感や重量感の再現にも注力しており、クラシックの静謐さとロックのエモーショナルさを同時に体感することができる。イングヴェイ・マルムスティーンやアイアン・メイデンなどの海外メタル勢から、日本のLOUDNESSやMUCCなど、彼女が敬愛するアーティストの曲を素直にセレクトしているところにも“楽しみながら”作ったことがうかがえる。
「クラシック方面からロックへのアプローチでいちばん頭を悩ませるのが、バンドのグルーヴだと思うんです。クラシックギターですからナイロン弦で弾いているんですけど、弦の響きにしても、ひずんで聴こえるような音を目指しています。そこはロックを体で感じて生きてきた自分にしかできないことなんじゃないかと思っていて。ただそのせいか、最近ではクラシックの演奏もロックに聴こえると言われるんですけどね(笑)」

一方の『BLACK ROSE』は、クラシックギタリストとしての彼女がしっかりと感じられる仕上がりに。現代曲を中心とした選曲に、彼女独自の感性があらわれているが、実はこちらにも“クラシックギタリストのロック愛”が発揮されているのだ。
「『BLACK ROSE』のほうは、ずっと弾いてきたレパートリーから選曲しています。スカルラッティの『ソナタ K.491,L.164』のようなバロック期の曲もありますが、基本はテデスコの『悪魔の奇想曲』とかブローウェルの『ソナタ』のような、私の好きな現代曲に寄っていますね。中には師匠である藤井敬吾先生の作品『羽衣伝説~山入端博の旋律に基づく~』のように去年初めて弾いた曲もあります。時代も国もバラバラですが、一枚にまとめたときにロック好きにも刺さりそうな選曲を目指していて。『羽衣伝説~山入端博の旋律に基づく~』は沖縄民謡の旋律を用いた曲ですけど、クラシックギターの奏法でも特殊な爪で擦る音が入っていて、ちょっとロックに通じるテイストのある楽曲ですし。ブローウェルの『ソナタ』も第三楽章とかは速弾きやアグレッシブな音の並びがあって、ロック好きもグッとくるんじゃないかと思うんです」
「私の世界に巻き込むぞ」というスタンスで
クラシックもロックも、どちらも愛する猪居さんだからこそ作り上げられた『BLACK ROSE』と『RED ROSE』。そんな2枚のアルバムの発売を記念したコンサート「猪居亜美 CLASSIC×ROCK 2026 −The Two Roses−」の開催が予定されている。
「今回のアルバム曲をメインにしつつ、過去のコンサートでの定番曲や、パガニーニの曲と彼へのオマージュとして作られた『悪魔の奇想曲』をかけあわせた曲など、ストーリーが感じられるコンサートになればいいなと思っています。デビュー当時はいかに楽譜に忠実に、真面目に弾くかということばかりに目を向けていたんですけど、それだと“上手だね”とは言ってもらえても“また聴きたい”にはならないのかなと。やっぱり自分ならではの音楽と、“お客さんを楽しませるぞ、私の世界に巻き込むぞ”っていうスタンスが大事じゃないかなと思うようになりましたね」

今年には公式ファンクラブ「Rose」もスタートし、コンサート以外でもファンとの交流を深めていきたいと語る猪居さん。
「これまで自分から発信することって、どうしても音楽的な真面目なことばかりだったんですけど、ファンの方はもっと普段の私のことが知りたいんだなということがわかって。例えばクラシックギターは指で弾くので、爪が割れないようネイルを塗るんですけど、どこのメーカーのものを使っているのか?みたいな、自身で取り入れられるような質問が多いんですよね。これからはそういった声にも応えていきたいなと思っています」
クラシックとロックの距離だけでなく、ファンとの距離も埋めようとする彼女がこれからどんな進化をしていくのか、その活動から目が離せなくなりそうだ。
CRAZY DOCTOR/LOUDNESS(Classical Guitar cover)LIVE Movie
■クラシック作品集『BLACK ROSE』

■ロックカバー集『RED ROSE』

発売元:フォンテック
発売日:2026年2月7日(土)
価格:各2,970円(税込)
詳細はこちら
■猪居亜美 CLASSIC×ROCK 2026 −The Two Roses−
日時:2026年2月21日(土)
会場:浜離宮朝日ホール(東京都中央区)
料金(全席指定・税込):プレミアムシート7,500円(前方席・直筆サイン入ポストカード付)、A席6,000円
詳細はこちら
■猪居亜美 ファンクラブ「Rose」
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