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イタリアから“爆走系”ロックンロールの魂を受け継ぐスモール・ジャケッツが登場

マネスキンの国際的ブレイクでにわかに注目されているイタリアのロック。古くからイタリアは音楽大国として知られ、オペラやカンツォーネからエンニオ・モリコーネやニーノ・ロータなどの映画音楽、ゴブリンやP.F.M.、バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソなどのプログレッシヴ・ロック、ラプソディ・オブ・ファイアやデスSSなどのヘヴィ・メタル、マウリツィオ・ビアンキのようなノイズ/インダストリアル・ミュージックに至るまで、あらゆる音楽が熱心に聴かれてきた。マネスキンの成功も決して驚くものではなく、今後もイタリアからさまざまなアーティストが世界に打って出てくることが予想される。

そんな中で、イタリアン・ロックンロールの旗手として世界各地の音楽シーンから注目されているのがスモール・ジャケッツだ。2021年12月に発表されたアルバム『Just Like This』は8年ぶり、通算5作目となるアルバムだ。ガレージ・ロックンロールと1970年代ハード・ロックが火花を散らしてぶつかり合うサウンドは健在で、長すぎるほどのインターヴァルをまったく感じさせない。オリジナル・メンバーはドラマーのダニー・サヴァナス(かつてポール・チェインのバックを務めたことも)のみだが、新しい血を取り入れたことでフレッシュでイキの良い極上なソングライティングと演奏を実現している。

本作で彼らの音楽に初めて触れたリスナーは、1990年代の“爆走系”ハイ・エナジー・ロックンロールを思い出すのではなかろうか。ヘラコプターズ、ターボネグロ、スーパーサッカーズ、フー・マンチュー、ジーク、ピーター・パン・スピードロックなど、砂ボコリを上げて突っ走る無頼ロックの汗の臭いが、スモール・ジャケッツから漂ってくる。

それもその筈、彼らはそんな“爆走系”の流れから生まれたバンドである。ダニーがバンドを結成したのは2000年、イタリアのチェゼーナでのこと。イタリア各地でライヴを行い、2004年に『Play At High Level』でアルバム・デビューを果たしている。ヘラコプターズやハードコア・スーパースターのイタリア公演でオープニング・アクトを務めるなどして知名度を上げていった彼らは2006年に『Walking The Boogie』を発表。ヘラコプターズのニッケとストリングスが友情ゲスト参加したことが話題を呼んだ。

2009年のサード・アルバム『Cheap Tequila』はマーク・オークがベースとヴォーカルで参加、“爆走系”の総本山といえるスウェーデンのイェーテボリでレコーディングと、バンドの個性が決定された作品だった。全編問答無用のロックンロールが貫かれた同作だが、単に疾走するのに留まることなく、モーターヘッドやステイタス・クオー、モット・ザ・フープルなどを彷彿とさせるオールドスクールなコクと味わいが込められていた。

結成からダニーと共にバンドを支えてきたギタリスト兼ヴォーカリストのルー・シルヴァーが2013年に脱退という事件に見舞われながら、スモール・ジャケッツは活動を続け、2014年には『IV』を発表。クワイアボーイズやダンコ・ジョーンズとの共演も実現している。

それからしばらくアルバムが途絶えた彼らだが、2017年のコンピレーション『Hard Rock Party Vol.2』に提供した『Get Out Of My Way』が絶賛され、そのロックンロール魂が健在であることを証明した。そして2021年、最新作の『Just Like This』がリリースされることになったのだ。

1曲目『Midnight Town』からフル・スロットルのアクセル全開。『Getting Higher』『Breakin’ The Line』など爆走しながらメロディのフックが明確な曲もあり、タイトル通り“ファンキーでクランチー”な『Funky Crunchy Woman』も単なるアクセントに留まることなくハイライトのひとつとなっている。『Get Out Of My Way』が再録されたことも、アルバムをさらにエキサイティングにしている。

1990年代にはエレクトリック・フランケンシュタインのサル・カンゾニエリ監修のハイ・エナジー・ロックンロール・アンソロジー・シリーズ『A Fistful Of Rock’n’Roll』が全13集リリースされ、世界の“爆走系”が一堂に会するなど活況を呈したが、近年あまり勢いが感じられない……と考えていた音楽ファンも少なくないだろう。『Just Like This』はそんなシーンに風穴を開ける、イタリアからのロックンロールの痛烈な一撃だ。シートベルトをして、新時代のロックンロールに備えよう!

 

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
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文/ 山崎智之

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2022.01.21
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