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モーターヘッド『極悪ライヴ』40周年エディションCD4枚組が2021年6月発売

ライヴ・アルバムはロックの“華”だ。一流のアーティストが名曲の数々をステージで熱演するさまを収めたライヴ・アルバムは、しばしばスタジオ作品を凌ぐエネルギーを持ってリスナーに迫ってくる。

ザ・フー『ライヴ・アット・リーズ』やディープ・パープル『ライヴ・イン・ジャパン』、シン・リジィ『ライヴ・アンド・デンジャラス』からB.B.キング『ライヴ・アット・ザ・リーガル』、ジェイムズ・ブラウン『ライヴ・アット・ジ・アポロ』など、名盤と呼ばれるライヴ・アルバムは枚挙に暇がないが、オールタイム・ベストのひとつとして必ず名前が挙がるのがモーターヘッドの『ノー・スリープ・ティル・ハマースミス』(邦題『極悪ライヴ』)である。

1975年にイギリスでデビュー、速く、うるさく、汚いという三拍子揃ったロックンロールで絶大な支持を得たモーターヘッド。『エース・オブ・スペイズ』(1980)やガールスクールとのコラボレーションEP『聖ヴァレンタイン・デー・マサカー』(1981)が大ヒット、1981年8月には野外フェス“ヘヴィ・メタル・ホロコースト”でヘッドライナーを務めるなど勢いに乗った彼らが発表したのが『極悪ライヴ』だった。

 

Motörhead – The Hammer (Live in Newcastle 1981)

『エース・オブ・スペイズ』『オーヴァーキル』『ボマー』『モーターヘッド』などのド名曲が爆音の塊となって襲いくるこのアルバムは1981年6月にリリースされるや一大センセーションを呼び、全英チャート1位を奪取。モーターヘッドは時代のヒーローとなった。

『極悪ライヴ』でプレイしているレミー・キルミスター(ヴォーカル、ベース)とフィルシー“アニマル”テイラー(ドラムス)は2015年、“ファスト”エディ・クラーク(ギター)は2018年に亡くなっており、鉄壁の黄金トリオは1人も残っていないが、その音楽は40年の月日を経ながら、とてつもない音量でファンの心を揺さぶり続ける。

ロック史上最強のライヴ・アルバムのひとつと評される『極悪ライヴ』にたったひとつ欠点があるとしたら、短いことだ。永遠に聴き続けたい名盤にも拘わらず、アナログ盤が主流の時代にLP1枚でリリースされたため、トータルは40分。たとえ極濃の密度とはいえ、もっと聴きたい。聴かせろ!……と全身を掻きむしるほどのフラストレーションが溜まる作品なのである。

おそらく同様に感じるモーターヘッド・ファンが世界中にいたのであろう、『極悪ライヴ』は時代を追うごとにボーナス・トラックが追加されてきた。1996年には3曲を追加した拡大盤CDが発売。シングルB面だった『オーヴァー・ザ・トップ(ライヴ)』、イギリスの雑誌『Flexipop』オマケのソノシートに収録されていた『トレイン・ケプト・ア・ローリン』などが加わったことでパワーアップされた。

2001年にリリースされた20周年アニヴァーサリー・エディションはアルバム本編に18曲を加えた拡大盤で、ファンを驚喜させた。オリジナル盤には未収録だった『トゥー・レイト、トゥー・レイト』『ザ・チェイス・イズ・ベター・ザン・ザ・キャッチ』や、別公演のテイクも加えたCD2枚組は、最強のライヴ・アルバムをさらに最強たらしめる激盤だった。

そして2021年、40周年を記念して、新たなアニヴァーサリー・エディションがリリースされることになった。今回はなんとCD4枚組ボックス・セットという超絶ヴォリューム。オリジナル・アルバムの最新デジタル・リマスター盤に未発表サウンドチェック音源を追加、さらに1981年3月28日のリーズ公演、29・30日のニューカッスル公演という、アルバムに使用された3公演のフル・ヴァージョンが収録されている。いずれもアレンジが大きく異なったりはしていないが、全盛期のモーターヘッドのライヴを3回分楽しめてしまうのは、まさに彼らの曲タイトルにある『オーヴァーキル』(過剰殺戮/やり過ぎ)である。

さらにCD4枚組ボックスには当時の関係者たちによる証言や写真が満載のブックレット、両面ポスター、ツアー・パスのレプリカ、ギター・ピック、パッチ、チケットのレプリカ、ポストカードが添付される。

モーターヘッドの40周年アニヴァーサリー・エディション

なお「CD4枚もモーターヘッドを聴き続けるのは体力的にキツイ!」というリスナーのために、本編CDとニューカッスル2日目(1981年3月30日)をカップリングしたCD2枚組セットも同時発売される。

「モーターヘッドはライヴ・バンドだ。アルバムを聴くだけではなく、俺たちを見に来て欲しい」とレミーは語っていたが、もはやそれは不可能となってしまった。我々はCDや映像作品を通じて彼らのステージをエクスペリエンスするしかなく、2021年だけで『Louder Than Noise… Live In Berlin』(2012年のライヴCD/DVD)、『The Lost Tapes Vol.1 (Live In Madrid 1995)』(ストリーミングのみ)という2作品がリリースされている。だが『極悪ライヴ』はロック史に冠たる究極のライヴ・アルバムのひとつとして君臨を続けるに違いない。

■インフォメーション

アルバム『No Sleep ‘Til Hammersmith – Expanded Deluxe 40th Anniversary Edition』

発売元:ADA/BMG RIGHTS MANAGEMENT
発売日:2021年6月25日
詳細はこちら
オフィシャルサイト

山崎智之〔やまざき・ともゆき〕
1970年、東京生まれの音楽ライター。ベルギー、オランダ、チェコスロバキア(当時)、イギリスで育つ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、一般企業勤務を経て、1994年に音楽ライターに。ミュージシャンを中心に1,000以上のインタビューを行い、雑誌や書籍、CDライナーノーツなどで執筆活動を行う。『ロックで学ぶ世界史』『ダークサイド・オブ・ロック』『激重轟音メタル・ディスク・ガイド』『ロック・ムービー・クロニクル』などを総監修・執筆。実用英検第1級、TOEIC 945点取得
ブログ/インタビューリスト

文/ 山崎智之
2021.06.03
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