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舞台上の小さなボックスから指揮者や歌手に大きな安心を届ける/オペラ劇場の音楽スタッフの仕事(後編)

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

歌手は、歌詞も歌い出しのタイミングも覚えてはいるが、プロンプターがいることで、安心して舞台に臨めるのだという。それは指揮者にも同様に当てはまる。ある指揮者は城谷さんがプロンプターボックスで指揮をすると聞いて喜んだ。オーケストラの指揮に集中できるからだ。オペラのなかにはオーケストラの演奏が複雑でむずかしいものも少なくない。「出演者や指揮者の気持ちがラクになれば、それが歌や演奏のクオリティを上げることにつながる」というのが、城谷さんの考え方だ。
一般に難曲とされるワーグナーのオペラの歌詞と楽譜をすべて暗譜してしまうのも城谷さんならでは。「覚えることで楽譜とつきっきりにならず、自由になれる。直接歌手の顔を見て、様子を確認しながら指示を出せるんです」。城谷さんは主にドイツ作品と日本の新作を担当。新国立劇場では他に二人の音楽スタッフがプロンプターとして活躍している。
終演後のカーテンコールで、歌手がプロンプターボックスに向かって拍手をしてくれる。それはまさに至福の瞬間。音楽スタッフへの信頼と称賛の証といえる。

若い頃は自分の技術向上にこだわっていたが、共同作業を繰り返すうちに、全体の中でどう動けばよいか、広い視野を持てるようになった。「職人指揮者と言われることは大変な褒め言葉です」と話す城谷さんは、今日も音楽スタッフとして至高の音楽作りを目指す。

オペラ劇場の音楽スタッフの仕事 - Web音遊人

写真左はプロンプターを務めた『ばらの騎士』の舞台。舞台手前中央の黒い“箱”がプロンプターボックス。この中で、オーケストラの指揮をモニターで見ながら、歌手に合図を送る。「舞台の端を見るときは体をこれくらいひねったりもするんですよ。声の大きさは、歌手には聞こえつつ、お客さんの耳には入らないくらいのバランスを心掛けています」

Q.子どものころになりたかった職業は?
A.特に電車マニアというわけではないのですが、電車の車掌さんですね。音楽家になるぞというような野望はありませんでした。作曲科に入ったのも、小学校1年生のときから習っていたピアノの先生の影響を受けてのことでした。

Q.休みの日の過ごし方は?
A.ラジオおたく(笑)なので家にいるときは、ずっとラジオをかけています。普段、ポップスを聴くことはあまりないのですが、ラジオから流れてくるジャズや歌謡曲などを聴いて、どんな曲が流行っているのかなどを耳に留めています。子どもが金管楽器をやっているので、一緒に演奏したりすることもあります。

Q.チャレンジしてみたいことはありますか?
A.今は編曲の仕事もしていて、ゆくゆくは自分でもオペラを書きたいと思っています。『セビリアの理髪師』のような明るいオペラ・ブッファ(喜歌劇)を日本語で書けたらと。

Q.好きな舞台作品は?
A.やはりオペラの作品ですね。ワーグナーの『トリスタンとイゾルデ』は本当によくできた作品です。作曲の技法も円熟していて、技法と芸術的な洗練度が最高に合致している作品だと思います。しかも、演奏は史上最高にむずかしいとされている。この作品を仕事で作る立場にもあるわけですが、大きな山に登るような気持ちで臨んでいます。作品自体の偉大さを感じつつ、そのむずかしさに立ち向かえる喜びがある。個人的な好みや仕事としてのやりがいなど、総合的な意味において私の中では最高の作品です。

Q.プライベートではどんな作品を観ていますか?
A.歌手のリサイタルやオーケストラのコンサート、オペラなど、いろいろ行っています。最近印象に残ったのは、メトロポリタン歌劇場のライブビューイングで見た『エレクトラ』です。メトロポリタン歌劇場の力を感じ、大変、感銘を受けました。

Q.プロンプターの仕事で大変なことは?
A.僕の失敗談ですが、ある歌手が稽古で最初に失敗したもののその後の練習でできるようになったので、もう大丈夫と高を括っていたら、本番で間違えてしまったことがありました。本番中、すべての歌手に気をつけるのは大変ですが、どこも気を抜くことはできないと、肝に銘じています。

Q.コンディション維持のためにしていることは?
A.あまりスポーツをしないのですが、ウォーキングはよくしています。ラジオを聴いたり、歌詞を覚えたりしながら歩いています。歩きながらつぶやいているとよく覚えられるんです。狭いプロンプターボックスの中では、歌手に合図を出すために体をひねったり、かがんだり、不自然な姿勢を取ることも多いので、適度に運動をして、姿勢を整えるようにしています。

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文/ 佐藤雅子
photo/ 坂本ようこ
2016.09.21
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